家庭医学館 「喉頭乳頭腫」の解説
こうとうにゅうとうしゅ【喉頭乳頭腫 Laryngeal Papilloma】
喉頭には、良性腫瘍(りょうせいしゅよう)の発生はほとんどみられませんが、比較的多くみられるのがこの喉頭乳頭腫です。喉頭のあらゆるところに生じますが声帯が好発部位です。
また、気管にまで進展することもあって、病理学的には確かに良性でも、気道を塞(ふさ)ぐ(気道狭窄(きどうきょうさく))という意味では臨床的に悪性です。
臨床的悪性といわれるもう1つの理由に、再発性があります。この病気の治療は手術が中心ですが、数回の手術はあたりまえで、なかには100回を超える手術を受けた人もいます。したがって、幼児期に発症すると、成人になるまでお付き合いせざるを得ない場合もあります。また、成人の場合は悪性化(4%)することもあります。
[原因]
HPV(ヒトパピローマウイルス)がほとんどの症例で見つかるので、このウイルスによる一種の感染症であろうといわれています。このウイルスは尖圭(せんけい)コンジローマ(「尖圭コンジローマ(女性の)」)の原因ともなるもので、生まれた直後の赤ちゃんや乳幼児に喉頭乳頭腫が発見された場合は、母親の尖圭コンジローマの有無を調査する必要があります。産道感染(さんどうかんせん)(垂直感染)の疑いがあるからです。それ以外に人から人へと感染することはないようです。
[検査と診断]
内視鏡検査と病理学的検索が有力です。まず内視鏡検査では、良好な画質が得られるファイバースコープと拡大視可能なテレビモニターが望まれます。常にほかの腫瘍やがんなどとの鑑別が必要で、良好な画面であれば95%以上の確率で、見るだけでも診断可能だからです。
腫瘍はあたかも乳頭の集合のように見える特徴のあるものです。がんなどの疑いがあれば、即座に治療用喉頭ファイバースコープで組織を採取するか、喉頭顕微鏡下の精査が行なわれます。
[治療]
CO2レーザーやYAG、KTPなどの喉頭内視鏡下レーザー手術が基本で、発見された時点ですぐに手術することが望まれます。