改訂新版 世界大百科事典 「国債償還制度」の意味・わかりやすい解説
国債償還制度 (こくさいしょうかんせいど)
国債の償還方法は,その財源のちがいによって現金償還と借換償還に分けられる。現金償還は,以前より減債基金に採り入れられた資金を取り崩すことによって国債を償還する制度である。これに対して借換償還とは,国債を償還するための財源を新たに国債を発行すること(借換国債の発行)に求める制度である。
借換国債の発行方法には次の2種類がある。第1は,償還期日のきた国債の保有者が借換債を引き受け,その所有国債を現金の代りに払込みに充てる方法で,乗換制度と呼ばれている。第2次大戦後の国債発行再開に伴い,1966年度から71年度までの期間に発行された7年利付国債のうち,満期の到来した国債の保有者が,国債引受けシンジケート団メンバーである場合,および資金運用部・日本銀行である場合に,この乗換制度が適用された。第2は,借り換えられる国債の保有者とはまったく関係なく国債を発行し,それによって調達される資金で旧債を償還する方法である。この方法は,資金運用部・日本銀行を除いて実施されている。たとえば,満期の到来した10年利付国債のうち,民間部門にある国債については,その償還財源として中期(2~4年)利付国債の借換発行が行われている。
また国債の償還制度は,償還時期によって満期償還と期限前償還に分類される。前者は,国債を発行するときに定めた一定の償還日にその全額を償還する制度である。後者は,発行時に定められた償還期日より前に国債の弁済を行う制度であり,国債規則に定める繰上償還,抽選償還,および買入消却(銷却)がある。買入消却には,将来の財政負担の軽減,流通市場の安定化を目的に民間部門に存在する国債を買い入れる場合と,相続税の代用納付等によって国庫に帰属した国債を消却する場合とがある。
執筆者:富田 俊基
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報