債務の内容たる給付を実現させる債務者その他の者の行為をいう。たとえば、借金を支払うとか、売買の目的物を引き渡すというのがこれにあたる。弁済をなすべき者は、通常は債務者であるが、民法はさらに第三者による弁済をも認めている。債権は、給付の実現される結果に重きを置くものであるから、債務者以外の者による弁済も認めて差し支えないわけである。もっとも、債務者以外の者による弁済を認めることになると、その場合には、弁済者と債務者との間に清算関係が生ずることとなり、弁済者は債務者に対して求償権をもつこととなる。そこで民法は、このような求償権を確保するために、弁済者は債権者に代位して、その債権およびこれに伴う担保を承継するという、いわゆる弁済者の代位の制度を規定している(499条・500条・501条)。
[竹内俊雄]
通常、弁済の場所は、当事者間の明示または黙示の意思表示や、その取引についての慣行で定まることが多い。しかし、前記のような標準によっては定まらない場合もありうるので、民法は、これにつき補充的に次のような基準を設けている。(1)特定物引渡債務の場合については、債権発生当時、その物が存在した場所(484条前段)、(2)その他の債務の場合には、弁済時の債権者の住所(484条後段)で、それぞれ弁済すべきものとされている。
[竹内俊雄]
民法は弁済の費用につき、特約のない限り債務者が負担するものと規定している(485条本文)。すなわち、債務者は、自分の負担で弁済の提供をしなければ、遅滞の責任を免れないこととなる。もっとも、債権者が住所を移転したり、あるいは債権が譲渡されたりすると、弁済の費用が増加することもありうるが、このような場合には、その増加額については、債権者が負担すべきものとされている(485条但書)。
[竹内俊雄]
債権者以外にも、債権者の代理人や債権質権者(民法366条)などのように弁済を受領する権限を有する者もあるが、一般的には、債権者以外の者は弁済を受領することができず、したがって、この者になした弁済は、債権を消滅させることができない。しかし、民法は、弁済者の信頼を保護して一般取引の安全を図り、かつ取引上の実際の必要性に応じて、次の例外を認めている。(1)債権の準占有者への弁済 債権の準占有者とは、債権者らしい外観をもった者をいう。たとえば、表見相続人や郵便貯金通帳とその取引印などの持参人がこれにあたる。債務者がこの者を債権者だと思って善意で弁済すれば、これが有効となり、真の債権者からの請求があっても、二重払いを強制されることはない(478条)。ただし債務者が善意で弁済したとしても、過失があった場合はその弁済は無効となる。(2)受取証書の持参人への弁済 受取証書の持参人は、弁済受領権限がありそうな外観をもつ者であるから、善意無過失でこの者に弁済した債務者は免責される(480条)。ただし、債権者が反証をあげて、債務者の悪意または知らなかったことに対する過失を立証すれば、債務者は免責されない(480条但書)。
なお、受取証書は真正なものでなければならない。すなわち、債権者またはその代理人の作成したものでなければならないものと解されている。
前述したような場合を除くほか、一般に弁済受領権限のない者に対する弁済は無効であり、不当利得として返還請求できることとなる。債務者は、改めて債権者へ弁済しなければならない。しかし、もし、弁済受領権限のない者が、受領した物または金銭を債権者の利益のために使った場合には、債権者が利益を受けた限度で債権の消滅が認められている(民法479条)。
[竹内俊雄]
債権者に対する同種の債務が複数あって、債務者の提供したものでは、全債務を消滅させるに十分でない場合、特定の債務を定めてその債務の弁済にあてることを弁済の充当という。債務のなかには担保のついたもの、つかないもの、期限のついたもの、つかないものなどがあり、どの債務の弁済にあてるかは、債務者・債権者の利害に関することとなる。この弁済の充当は、当事者の指定で決定できるが、この指定がなかった場合につき、民法は補充的な規定を設けている(488条~491条)。
[竹内俊雄]
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少子化とは、出生率の低下に伴って、将来の人口が長期的に減少する現象をさす。日本の出生率は、第二次世界大戦後、継続的に低下し、すでに先進国のうちでも低い水準となっている。出生率の低下は、直接には人々の意...
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