手形金額が支払われるべき日として手形上に記載された日。支払期日ともいい,旧商法上は満期日(まんきじつ)といった。手形法上,〈満期の日〉(手形法41条1項,70条1項)とは同義であるが,〈支払をなすべき日〉(38条1項,44条3項)とは必ずしも一致せず,満期が法定の休日であるときは,これに次ぐ第一の取引日が支払をなすべき日にあたる(72条1項,77条1項9号)。また,現実に支払のなされた〈支払の日〉(41条1項)とも異なる。満期は支払を求めうる唯一の日ではないからである(38条1項,70条1項,77条1項3,8号参照)。
満期は可能な日であって,かつ一定し,単一でなければならない。すなわち,振出日付より前の日や暦にない日の記載,到来するか否かまたはいつ到来するか不確定な日などの記載は認められず,手形金額の一部ずつにつき異なる満期を定めた分割払の記載も許されない(33条2項,77条1項2号)。また,満期の態様は,(1)何年何月何日,何年文化の日というように特定の日を満期とするもの(確定日払),(2)振出しの日付から手形に記載された一定の期間を経過した日を満期とするもの(日付後定期払),(3)支払のために手形が呈示された日を満期とするもの(一覧払),(4)引受けまたは一覧のために手形が呈示された日から手形に記載された一定の期間を経過した日を満期とするもの(一覧後定期払)の4種に限定され,これらの態様と異なる満期の記載は認められない(33条,77条1項2号)。
満期の記載は手形要件の一つ(1条4号,75条3号。〈振出し〉の項参照)なので,不適法な満期の記載は手形を無効とする。しかし,満期の記載がまったくない手形は一覧払のものとみなされ(2条2項,76条2項),無効となるのを救済される。解釈上難しいのは不完全な記載のある場合である。例えば年号と年のみの記載がある場合は,満期の記載のないものと同視して一覧払とみなすか,不適法な記載として無効とするか,後日取得者に月日を補充させる意思で白地振出しをしたものとみるか,見解が分かれうるが,最後の見解をとる者が多い。また,手形用紙を使用し印刷された〈支払期日 年 月 日〉なる文字を抹消せず空白のまま残した手形を交付された場合は,白地(しらじ)手形と認める判例と,一覧払とみなす判例があるが,最近の学説は,むしろ所持人にどちらかを選択する権利があるとする見解が有力である。
なお小切手についても満期はありうるが,それは当然に一覧払とされ,これに反する一切の記載は効力を有しない(小切手法28条1項)ので,満期を問題にする意義は少ない。
執筆者:今井 潔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
手形の記載上、手形金の支払いがあるべき期日をいう。手形法にいう支払いをなすべき日と通常一致する。しかし、満期が法定の休日にあたる場合、これに次ぐ第一取引日が支払いをなすべき日にあたることになる(手形法72条1項)。そこで、満期と支払いをなすべき日が異なることもある。手形の請求は、支払いをなすべき日(通常、満期日、それが休日にあたる場合は、それに次ぐ第一取引日)とそれに次ぐ2取引日内に、手形の呈示をなしてすることになる。
なお満期には、確定日払(確定の日を満期とするもの)、日付後定期払(振出しの日付後手形に記載した期間の末日を満期とするもの)、一覧払(支払のための呈示、すなわち一覧があった日を満期とするもの)、一覧後定期払(振出しの日付から1年内に一覧のための呈示を振出人になし、この一覧の日から、手形に記載された期間の末日を満期とするもの)という4種類がある。満期の記載がないと一覧払の手形とされる。
[永井和之]
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