日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
国連パレスチナ難民救済機関
こくれんぱれすちななんみんきゅうさいきかん
United Nations Relief and Works Agency for Palestine Refugees in the Near East
1948年の第一次中東戦争(パレスチナ戦争)で発生した難民を救済するために国連総会の決議によって設立され、1950年5月から活動を開始した国連機関。略称UNRWA。
土地や住居を失った約75万人の難民への緊急救援活動が目的だったが、事業は定期的に延長され、人口の自然増加により救済の対象となる登録難民数は約512万人(2012年1月)に上る。このうち、29%にあたる約149万人が難民キャンプに暮らしている。難民キャンプは、レバノン12、ヨルダン10、シリア9、ヨルダン川西岸19、ガザ地区8の計58か所。
UNRWAは、各ホスト国が運営する難民キャンプやキャンプの外で暮らす難民に対して、食料などの生活援助、教育・医療活動など多岐にわたる救援活動を行っており、難民の自立を支援するための職業訓練にも力を入れている。活動の財源は、アメリカ合衆国を筆頭とする各国政府や機関、民間団体からの寄付金に依存している。
本部は1978年までベイルート、その後はオーストリアのウィーンに移転したが、1996年からヨルダンのアンマンとパレスチナ自治区のガザの2か所となった。
2012年11月のイスラエル軍によるガザ攻撃や、2011年以降のシリア内戦で50万人以上のパレスチナ難民が陥っている状況を伝えるなど、パレスチナ難民の窮状を訴える緊急アピールも発信し続けている。
[勝又郁子]
『土井敏邦著『朝日選書「和平合意」とパレスチナ――イスラエルとの共存は可能か』(1995・朝日新聞社)』