改訂新版 世界大百科事典 「在日朝鮮人帰還協定」の意味・わかりやすい解説
在日朝鮮人帰還協定 (ざいにちちょうせんじんきかんきょうてい)
1959年8月13日インドのカルカッタで日本赤十字社と朝鮮民主主義人民共和国赤十字会との間で結ばれた在日朝鮮人の共和国帰還に関する協定。1953年朝鮮戦争の休戦協定成立前後から在日朝鮮人の共和国への帰国希望者が出はじめ,また55年在日本朝鮮人総連合会結成以後,共和国の経済建設への参加,教育問題・生活問題の帰国による解決などの大衆的要望が出され,帰国運動を組織的に展開,11万余の帰国希望者が登録された。日本政府は59年2月,基本的人権にもとづく居住地選択の自由という国際通念の原則で閣議了解にいたった。帰還に際して韓国政府ならびに在日本大韓民国居留民団側の反対・阻止運動があったが,協定は8月成立し,12月14日新潟港から第1次帰国船が出航,67年11月まで155回配船,8万8000余人が帰国し,いったん打ち切りとなった。しかし帰国申請者中諸般の事情で帰国できなかった者がいたため,その後日・朝両赤十字社間の協議をへて,71年2月モスクワ会議で合意に達し,同年5月から帰還が再開され,80年5月までに約5600余人が帰国した。
執筆者:朴 慶 植
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報