日本赤十字社(読み)ニッポンセキジュウジシャ

デジタル大辞泉 「日本赤十字社」の意味・読み・例文・類語

にっぽん‐せきじゅうじしゃ〔‐セキジフジシヤ〕【日本赤十字社】

赤十字精神にのっとって、戦争や災害時に救護・医療を行う日本における組織。明治10年(1877)西南の役の際に佐野常民らによって設立された博愛社を前身とし、明治20年(1887)国際的に公認され現名に改称。現在は昭和27年(1952)の日本赤十字社法による認可法人。日赤。JRCS(Japanese Red Cross Society)。

にほん‐せきじゅうじしゃ〔‐セキジフジシヤ〕【日本赤十字社】

にっぽんせきじゅうじしゃ

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精選版 日本国語大辞典 「日本赤十字社」の意味・読み・例文・類語

にほん‐せきじゅうじしゃ‥セキジフジシャ【日本赤十字社】

  1. 赤十字に関する諸条約の精神にのっとり、医療・救難・社会事業などを目的とする団体。明治一〇年(一八七七)佐野常民等の設立した博愛社を前身とする。同二〇年に日本赤十字社と改称、昭和二七年(一九五二)日本赤十字社法に基づく特殊法人となる。標章として白地に赤の十字を使用する。日赤。

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改訂新版 世界大百科事典 「日本赤十字社」の意味・わかりやすい解説

日本赤十字社 (にほんせきじゅうじしゃ)

赤十字に関する諸条約および赤十字国際会議において決議された諸原則の精神にのっとり,赤十字の理想とする人道的任務を達成することを目的として,病院経営,災害救助等種々の事業を行っている法人。西南戦争で出たおびただしい死傷者のうち,官軍側の負傷者は軍病院に収容されて手当てをうけたが,西郷側の死傷者は山野に放置され,その惨状は目をおおわしめた。これに対して元老院議官佐野常民らは,西郷側の暴徒といえども天皇の赤子であることには変わりないと政府に請願書を提出,かつて佐野が藩主の命でパリに行ったときにその存在を知った赤十字社にならい,1877年博愛社を創設した。博愛社はその後陸軍の後援のもとに博愛社病院を作り,同時に赤十字条約に加入,87年,日本赤十字社と改称された。しかし外国の赤十字が宗教的・人道的観点から博愛慈善を主眼としていたのに対して,日本の赤十字は,忠君愛国の精神に基づく報国恤兵(じゆつぺい)を主旨としていた点で大きく異なっていた。このような理念は,国内組織のちがいとしてもあらわれ,外国の赤十字社が分権主義で,いくつもの独立した地方団体が連合して,中央交渉部をおいていたのに対して,日本では中央集権化がとられ,皇室を中心とした組織となっていた。

 第2次大戦後の1952年,日本赤十字社法が制定され,日本赤十字社は,冒頭に述べた事項を目的とすることとなった。同時に,赤十字に関する国際機関や各国赤十字と協調を保ち,国際赤十字事業の発展に協力し世界の平和と人類の福祉に貢献するという国際性もうたわれた。現在の日本赤十字社は社員をもって組織される法人で,目的達成のため次のような業務を行うこととなった。(1)赤十字に関する諸条約に基づく業務に従事すること。(2)非常災害時または伝染病流行時において,傷病その他の災厄を受けた者の救護を行うこと。(3)常時,健康の増進,疾病の予防,苦痛の軽減その他社会奉仕のために必要な事業を行うこと。(4)その他。以上のうち,(1)および(2)の業務は国の委託を受けて行うものを含んでいる。なお,以上の業務を達成するため,救護員の養成や,国の命を受けて業務の実施に必要な施設または設備の整備を行うほか,社会福祉事業法の定めによって社会福祉事業を経営している。なお,こうした事業の遂行に必要な費用は,社員の納める社費のほか,国の委託費補助金および寄付金によって賄われている。
赤十字
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「日本赤十字社」の意味・わかりやすい解説

日本赤十字社(にっぽんせきじゅうじしゃ)
にっぽんせきじゅうじしゃ

紛争や自然災害時における被災者に、人種や国境を越えて人道的立場から保護と援助を行う赤十字精神にのっとった日本での組織。日本赤十字社法(昭和27年法律305号)による特殊法人である。1877年(明治10)西南の役の際、傷病者救護のため、佐野常民(つねたみ)、大給恒(おぎゅうゆずる)(1839―1910)両元老院議官らによって始められた救護団体「博愛社」がその前身である。同社は1886年日本政府がジュネーブ条約に加入したので翌年日本赤十字社と改称し、国際赤十字の一員として公認された。その活動範囲は広く、世界各国の赤十字と連携して他国の難民救済、国内における災害救援、医療、看護師等の養成、献血・輸血の血液事業、講習(救急法、水上安全法、家庭看護法など)、またボランティアによる組織の「赤十字奉仕団」、学校教育の枠内で赤十字精神形成のための「青少年赤十字」などの結成と活動も行っている。日本赤十字社の事業は、およそ1200万人を数える社員(会員)や関係団体からもたらされる社費および一般からの寄付によって支えられており、毎年5月には社員増強運動が行われている。日本赤十字社の医療施設は、病院、老人保健施設など104、血液センター67、社会福祉施設28、職員5万5204人(2007年現在)である。

[梶 龍雄]

『日本赤十字社編・刊『日本赤十字社社史稿』編年体で10巻(明治10年~平成7年)既刊(1911~1999)。以下続刊予定』『桝居孝著『世界と日本の赤十字』(1999・タイムス)』『吉川龍子著『日赤の創始者 佐野常民』(2001・吉川弘文館)』



日本赤十字社(にほんせきじゅうじしゃ)
にほんせきじゅうじしゃ

日本赤十字社(にっぽんせきじゅうじしゃ)

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知恵蔵 「日本赤十字社」の解説

日本赤十字社

日本赤十字社法という法律に基づいて設立された法人。
日本赤十字社は、赤十字に関する諸条約及び赤十字国際会議において決議された諸原則の精神にのっとり、赤十字の理想とする人道的任務を達成することを目的とする。
赤十字は、人道・公平・中立・独立・奉仕・単一・世界性の7つを基本原則としている。世界中の赤十字がこの基本原則に従って行動し、戦争・紛争犠牲者の救援を始め、被災者の救援、医療・保健・社会福祉事業などを行っている。
2011年3月11日に発生した東日本大震災において、日本赤十字社は避難所での救護所の開設や被災地の主要医療施設に医療スタッフを派遣するなどの医療救護活動や、災害救援物資の搬送、義援金の募集、被災者への「こころのケア」などを行った。
日本赤十字社の本社は東京にあり、全国47都道府県にある支部、病・産院、血液センター、社会福祉施設などを拠点に活動を行っている。
2011年4月現在、全国に、病院など104、看護師養成施設(大学・専門学校など)26、血液事業施設212、社会福祉施設28の施設があり、5万9000人の職員がいる。
赤十字のシンボルとなっている、白地に赤い十字のついた「赤十字マーク」は、戦争や紛争などで傷ついた人々と、その人たちを救護する軍の衛生部隊や赤十字の救護員・施設などを保護するためのマークである。紛争地域などで「赤十字マーク」を掲げている病院や救護員などには、絶対に攻撃を加えてはならないと国際法や国内法で厳格に定められている。

(星野美穂  フリーライター / 2011年)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「日本赤十字社」の意味・わかりやすい解説

日本赤十字社
にほんせきじゅうじしゃ
Japanese Red Cross Society

赤十字国際委員会の承認を受け,赤十字の精神にのっとり,人道的任務の達成を目的としている団体。1877年西南戦争の傷病者救護のため,元老院議官佐野常民大給恒らによって設立された博愛社に始まる。1886年日本がジュネーブ条約に参加したので翌 1887年2月日本赤十字社となり,9月に赤十字国際委員会から公認された。第2次世界大戦の敗戦により公認の資格を失ったが,1952年日本赤十字社法が制定され,1953年ジュネーブ条約復帰とともに新しい活動が始まった。東京に本社,都道府県に支部がある。全国に病院,血液センター,社会福祉施設,看護大学などをもっている。日常的な医療活動のほか,献血の呼びかけ,災害時の救援や義援金のとりまとめなども行なっている。

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百科事典マイペディア 「日本赤十字社」の意味・わかりやすい解説

日本赤十字社【にほんせきじゅうじしゃ】

日赤と通称。赤十字の精神にのっとり救護活動を行う特殊法人。1886年赤十字条約に日本が加盟したのに伴い1887年博愛社を改称。災害救助,病院経営,看護婦・助産婦の養成,医療社会事業等を行う。国の救護業務の委託を受け,厚生大臣の監督と国・地方公共団体の助成を受ける。
→関連項目災害救助法佐野常民赤十字社

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「日本赤十字社」の解説

日本赤十字社
にほんせきじゅうじしゃ

通称日赤。赤十字(ジュネーブ)条約にもとづく組織。日本は1886年(明治19)加盟。77年の西南戦争に際し,傷病兵の平等救護のため佐野常民(つねたみ)らによって結成されていた博愛社(はくあいしゃ)を,87年日本赤十字社と改称した。1901年成立の日本赤十字社条例にかわり,10年に定められた新条例により,陸・海軍の戦時衛生勤務を助けることを任務とし,陸・海軍大臣の監督下におかれ,軍事的性格のものとされた。第2次大戦後の47年(昭和22)にこの条例は廃止された。53年戦争犠牲者保護に関する新しいジュネーブ条約に加入することになり,前年の52年に日本赤十字社法が成立した。この第1条で「赤十字に関する諸条約及び赤十字国際会議において決議された諸原則の精神にのっとり,赤十字の理想とする人道的任務を達成すること」が目的とされた。

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旺文社日本史事典 三訂版 「日本赤十字社」の解説

日本赤十字社
にほんせきじゅうじしゃ

1864年のジュネーヴ条約(赤十字条約)に基づき,傷病者の救済・治療などにあたる国際的な社会事業団体
1877年の西南戦争の際,佐野常民 (つねたみ) らが組織した博愛社に始まり,'86年赤十字条約に加盟,翌年現名称になる。佐野が初代社長。戦時中は軍部の統制下,戦時衛生勤務につき軍事的性格の強いものであった。第二次世界大戦後は,人道的見地から災害救護・医療などの社会福祉事業を行う。

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世界大百科事典(旧版)内の日本赤十字社の言及

【佐野常民】より

…佐賀藩士,日本赤十字社の創立者。藩命により京都,大坂へ遊学。…

【従軍看護婦】より

…戦地で傷病兵の看護に当たり,軍の指揮系統に属する看護婦。日本では,日本赤十字社の前身である博愛社がすでに西南戦争に際して看護人(男性)を熊本や長崎に送っている。日清戦争が起きると日本赤十字社は自社で養成した看護婦を臨戦地の宇品,広島へ派遣した。…

※「日本赤十字社」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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