改訂新版 世界大百科事典 「地蒔式養殖」の意味・わかりやすい解説
地蒔式養殖 (じまきしきようしょく)
アサリ,ハマグリ,カキ,ホタテガイなどの稚貝(種苗)を一定区画の浅海にまきつけ,天然餌料で成長させ収獲する粗放的な養殖法。まきつけ方には満潮時に船の上からまきつける潮まき法と干潮時に干潟にまきつける潟まき法とがある。
アサリの場合は殻長2cm前後の種苗を春または秋に養殖区域10m2あたり12~36l前後まきつけ,6ヵ月から1年後の秋から春にかけて3.5~4cmに育ったものを収獲する。ハマグリの場合は4~5月ごろに,殻長2cm前後の種苗を水深1~4mの波静かな水域に,10m2あたり11~27lまきつける。そして,ふつう1~3年後の秋から春にかけて,6cm前後になったものから収獲していく。カキ養殖は現在,生産性の高い垂下式養殖が主流を占めているが,地まき式も一部行われている。秋から春にかけて稚貝を砂地の海底にまきつけ,1年目の秋から2年目の冬まで収獲する。養成中ときどき熊手のような器具で海底をかきまぜる〈打ちかえし〉の作業を行う。なお,一粒ガキが好まれる欧米では地まき式が今も広く行われており,周りを囲って干潮時にも海水が残るようにしたり,養殖場を浅い海水池にしたりして,カキの成長を促進するくふうがされている。ホタテガイの場合も垂下式が中心であるが,地まき式も北海道沿岸や陸奥湾などで行われている。この場合,養殖というよりも漁業資源の維持増大が目的となっている。これらのほか,モガイ,シジミなども地まき式養殖の対象とされている。
→養殖
執筆者:若林 久嗣
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報