梶井基次郎(かじいもとじろう)の短編小説。同人雑誌『青空』1925年(大正14)2月号に発表。「ある午後」「手品と花火」など6編の断章からなり、幼い異母妹を失った傷心をいやすために、姉夫婦の家に一夏滞在した峻(たかし)という青年の生活スケッチという形をとっている。峻は梶井自身とみてよい。三重県飯南(いいなん)郡松阪町(現松阪市)の明るい自然と、そこで暮らす姉夫婦、幼い姪(めい)、夏休みで帰省している義兄の妹との心の交流を描いて、「単純で、平明で、健康な世界」への憧憬(しょうけい)が語られている。『檸檬(れもん)』と並んで梶井文学の原点を暗示する作品である。
[吉田凞生]
『「城のある町にて」(『檸檬・冬の日 他九編』所収・岩波文庫)』▽『浜川勝彦編『鑑賞日本現代文学17 梶井基次郎・中島敦』(1982・角川書店)』
貨幣 (名目) 賃金額を消費者物価指数でデフレートしたもので,基準時に比較した賃金の購買力を計測するために用いられる。こうしたとらえ方は,名目賃金の上昇が物価の上昇によって実質的には減価させられている...