日本大百科全書(ニッポニカ) 「基礎社会・派生社会」の意味・わかりやすい解説
基礎社会・派生社会
きそしゃかいはせいしゃかい
社会学者高田保馬(やすま)によって提示された社会類型。基礎社会とは、血縁と地縁という自然的で直接的な紐帯(ちゅうたい)によって人々が結合している社会である。血縁を基礎とするものとしては、家族、氏族、部族、民族などがあり、地縁を基礎とするものとしては、村や町、郡や県、そして国家などがある。いずれにしても基礎社会は血縁、地縁を基本的な結合原理として、そのうえに人々の間に意識的な共働が行われる社会である。要するに、人々の共同生活の営みに必要な諸活動が血縁、地縁を基礎として行われている社会が基礎社会である。
これに対して派生社会とは、基礎社会を出発点としながらそれから派生した社会であって、類似、あるいは共通の利益という紐帯によって人々が人為的、目的的に結合している社会ないし集団である。類似を結合基盤とするものとしては政党や宗教団体があり、これを高田は同類社会と名づけている。共通の利益を求める派生社会の典型としては会社や協会がある。これを高田は目的社会と名づけている。社会発展の点からみると、基礎社会からまず派生するのは同類社会であり、次に目的社会が派生する傾向がみられる。類似による結合は自然的な傾向であって、共働も行われやすい。いずれにしても、派生社会が、基礎社会で行われていた諸機能を吸収して分化・拡大するのが近代社会の傾向である。
[佐藤慶幸]