改訂新版 世界大百科事典 「堆積輪回」の意味・わかりやすい解説
堆積輪回 (たいせきりんね)
sedimentary cycle
いくつかの地層が一定の順序で繰り返し累重する堆積現象。堆積サイクルともいう。大規模なサイクルは単位サイクルの厚さが数mから数百mに達し,海進・海退現象または海水準変動(海水面変化),地盤の沈降・隆起といった地殻活動によって発達が規制される。北アメリカやヨーロッパの安定地域に発達する広大な含炭層は典型的な大規模サイクルを示すが,そのおもな原因はこれらの広大な平坦地域が緩慢な地殻の上下運動(造陸運動ともいう)または海水準変動によって,海水が広がって浅海環境になったり,それが退いて淡水性の環境になり,低平湿原に含炭層を発達させた。海水準変動をサイクル形成の主要因とする見解には,氷期と間氷期の繰返しという気候要因の重視と大洋中央海嶺の隆起・沈降と関連づける見方がある。大規模堆積サイクルのことをサイクロセムcyclothemということがある。小規模サイクルは厚さ数cmまたはそれ以下の規模で,季節,気候,流水変化など一般に短周期の変動に起因する。氷縞粘土,級化層理,蒸発岩層,縞状鉄鉱層などがその好例である。このような小規模サイクルは堆積リズムrhythmic sedimentationと呼ばれ,堆積サイクルとは区別されることが多い。一般にすべての堆積層に堆積サイクルが認められるので,詳細な岩相解析に基づいてサイクルの特徴を見いだすことは堆積時の堆積環境および構造運動の特性を明らかにするうえで重要である。
執筆者:岡田 博有
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報