帯状でない、大陸的ないし亜大陸的な広範な地域が、1000万年オーダーの長期間に徐々に沈降または上昇、あるいはそれらを繰り返す地殻変動を総称していう。造陸運動があったことは、過去の海成層が非常に広く陸上に分布すること、またしばしばその上に陸成層が重なること、すなわち広範な地域に海進・海退があったことに示されている。また海成層や低地で堆積(たいせき)した陸成層が、海水面が上昇したことはありえないほどの高さに、ほとんど変形しないままで広く分布する地域があり、すなわち大陸的な隆起があったことに示されている。しかし、海進・海退には新生代第四紀の氷河の消長に伴うもののように地殻変動によらないものがある。また氷期に厚い氷河の荷重のために深く沈下していたスカンジナビア半島が、氷河が融(と)けて荷重がなくなった完新世(現世)に隆起したように、地球内部に根本原因をもたない造陸運動もある。
造山運動がきわめて短期間の地殻変動であると考えられたころには、造陸、造山運動は同時に同地域におこることはないと考えられた。しかし日本列島では、造山運動期にアジア東部地区と同時に海進・海退が造陸運動としておこった時期があることも知られている。
[木村敏雄]
元来は大陸をつくる運動という意味で,山をつくる運動である造山運動と対照をなす言葉である。この語は,1890年にG.K.ギルバートによって初めて用いられたが,造山運動との相違を明確にして再定義を与えた(1919)のはシュティレH.Stilleであった。シュティレによれば,造陸運動は長い期間にわたって進行する地殻の広範な部分の緩慢な昇降運動であって,褶曲や断層を形成したり火成活動を伴うことはほとんどなく,広い台地や,海盆や,大陸内部の盆地などをつくるものである。これらの成因に関しては,今日なお学問的に異なる見解が対立している。
執筆者:植村 武
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