氷縞粘土(読み)ヒョウコウネンド(その他表記)varve

翻訳|varve

デジタル大辞泉 「氷縞粘土」の意味・読み・例文・類語

ひょうこう‐ねんど〔ヒヨウカウ‐〕【氷×縞粘土】

氷河湖水底に形成され、しま模様を示す堆積物たいせきぶつ。やや粗いシルトとより細粒粘土とが交互に層をなし、その層の数や状態から氷期年代などが推測できる。

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精選版 日本国語大辞典 「氷縞粘土」の意味・読み・例文・類語

ひょうこう‐ねんどヒョウカウ‥【氷縞粘土】

  1. 〘 名詞 〙 氷河湖の水底に形成された縞模様を示す堆積物。淡色シルトとより細粒の暗色粘土とが交互に沈積し、その層の縞数や状態から氷期の年代や気候変動などが推測できる。

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改訂新版 世界大百科事典 「氷縞粘土」の意味・わかりやすい解説

氷縞粘土 (ひょうこうねんど)
varve

氷河の前面にできる湖に,融氷水の流れでつくられる細粒の砂層と薄い粘土層との1組の縞目がつみ重なった堆積物。縞目をつくる砂の堆積は春から夏の融氷時におこなわれるが,その後に冬に湖が凍るまでに粘土の沈殿がおこなわれる。したがってそのような砂と粘土とが,厚さ3cm以下の色の明暗で示される年輪と同じ意味の年層として,くり返し重なっている。スウェーデンのド・イェールG.De Geer(1858-1943)はこれを〈バーブ〉(反復するという意味)と名づけた。

 氷河の後退した方向に,このような氷縞粘土の露頭を追ってそれぞれのところでの氷縞の層序を対比していけば,氷河が後退した時期やその速度を知ることができる。イェールは,この氷縞粘土編年法によってスウェーデン南部でのスカンジナビア氷床が後退・消失する過程を1000kmにわたって追跡した。その結果,スカンジナビア氷床がバルト海南部まで後退したダニ氷期(1万3000~1万5000年前),スウェーデン中部~フィンランド南部まで後退したゴチ氷期(1万2000~1万3000年前),およびスカンジナビア山地まで後退したフィニ氷期(8800~1万年前)と年代区分ができた。そして氷床がスウェーデンのラグンダ湖付近で二分して消失していく時期を,後氷期のはじまりのゼロ点とし,それ以後の氷縞(年)をプラス(それ以前はマイナス)にしている。フィンランドでは,サウラモM.Sauramo(1889-1958)がこの方法でゼロ点をヘルシンキ付近の終堆石から氷床が後退しはじめた点とし,イェールのゼロ点より1350年前としている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「氷縞粘土」の意味・わかりやすい解説

氷縞粘土
ひょうこうねんど

氷河湖底の堆積(たいせき)物で、淡色シルトと暗色粘土との非常に細かな数ミリメートル~数センチメートル単位の縞(しま)状互層。前者は夏季の融氷期における増水によって、より粗粒な砕屑(さいせつ)物が流入して沈積したもの。後者の暗色粘土層は、浮遊していた粘土粒子だけが冬季に沈殿して形成された。したがって、この一組が1年を示すから、縞数を数えることによって年代を知ることができるので、新生代第四紀後半の年代対比に用いられている。また、年層の厚さの変化から気候変動も推定できる。

[岩松 暉]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「氷縞粘土」の意味・わかりやすい解説

氷縞粘土
ひょうこうねんど
varved clay; varve

バーブともいう。氷河の末端から流されて堆積した縞状の細粒堆積物。氷河の浸食作用によって氷河に取込まれた粘土質の細粉が氷河の末端で氷が解けると,表流水に運ばれて堆積する。季節の変化で流量の多いときは比較的粗粒物質が,流量の少い乾季には細粒の粘土が堆積するので,1年間に粗粒から細粒へと変る1組の縞ができやすい。この1組の縞の厚さは数 mm~数 cm程度。この1組の縞を1単位として枚数を数えると,氷期の年数がわかる。北ヨーロッパの氷縞粘土では約 9000年の年数がわかるという。氷縞粘土は普通の粘土に比べて化学的風化作用が進まず,新鮮な岩石の細粉の性質をもつ傾向がある。

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百科事典マイペディア 「氷縞粘土」の意味・わかりやすい解説

氷縞粘土【ひょうこうねんど】

氷河から解けた流水によって運ばれた泥土で,湖底に堆積して氷縞を生じたもの。かわくと薄くはげやすい。スウェーデン,カナダ,南米南部などによく発達する。グリーンランドの氷河の末端の湖では,現在でもできている様子が観察されている。
→関連項目年代測定法氷河成層

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