改訂新版 世界大百科事典 「堕胎薬」の意味・わかりやすい解説
堕胎薬 (だたいやく)
abortives
堕胎を目的とした薬物。堕胎は外科的手術によるのが安全であり,また確実といえる。堕胎薬は,治療上の必要から専門医が用いる場合もあるが,古くから民間でひそかに用いられることも少なくなかった。しかし,それらは,激しい作用のために有害で危険なものか,またはほとんど効果がないかのいずれかであった。キニーネ,麦角アルカロイドなども用いられた。子宮収縮薬のほか,下剤で腸運動を亢進して反射的に子宮を収縮させ堕胎をおこす方法もとられたが,副作用がつよく母体にとって危険をともなった。日本ではホオズキの根が用いられたが,薬効成分は未詳である。今日では,子宮収縮作用をもったプロスタグランジンF2αが座薬として用いられる。
執筆者:高柳 一成
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報