翻訳|quinine
南アメリカ原産のキナの樹皮に含まれるアルカロイドのなかの一つ。1820年ペルティエPierre-Joseph Pelletierらによって純粋に分離された。分子式C20H24N2O2,融点177℃,無色針状晶。光学活性体で左旋性。塩酸塩,硫酸塩など水溶性塩類の味はきわめて苦い。合成抗マラリア薬が開発された1930年ころまでキニーネは唯一のマラリア治療薬であった。現在でも他の薬剤に耐性のマラリアの治療に使われる。マラリア原虫の発育環のうち,胞子小体には無効で,赤血球中での無性生殖期の繁殖体を抑える。ほかに解熱作用,子宮収縮作用,心筋抑制作用などがある。副作用として,耳鳴り,頭痛,めまい,溶血,視障害など。
→マラリア
執筆者:粕谷 豊
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C20H24N2O2(324.41).キナ皮のもっとも重要なアルカロイド.アカネ科Cinchona officinalisの樹皮はキニーネを8% 含んでいるが,そのほかの同属植物の樹皮では1~4% 含む.針状晶(エタノール).融点177 ℃(一部分解).三水和物は結晶性粉末.融点57 ℃.-169°(エタノール),-117°(クロロホルム).pK1 5.07,pK2 9.2.水に難溶,ベンゼン,エーテルに可溶,エタノール,クロロホルムに易溶.希硫酸に溶かすと強い青色の蛍光を発する.マラリア疾患に特効性を有するほか,解熱作用もある.LD50 800 mg/kg(ウサギ,経口).[CAS 130-95-0]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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キナノキの樹皮(キナ皮)に含まれるキナアルカロイドの代表的なもので、キノリン誘導体である。日本薬局方には塩酸キニーネ、硫酸キニーネ、エチル炭酸キニーネの3種が収載されている。塩酸キニーネ、硫酸キニーネは白色の結晶で、無臭で味はきわめて苦い。抗マラリア剤、解熱・鎮痛剤、強壮剤として用いられたが、現在は抗マラリア剤としてわずかに使用されるのみである。マラリアの治療には塩酸キニーネ1日量1グラムを5~10回に分けて服用する。頭痛、めまい、耳鳴り、難聴、弱視などの副作用がみられる。子宮収縮作用、溶血作用もある。エチル炭酸キニーネは苦味がほとんどなく、小児の解熱剤としても用いられたことがあり、ドイツ名でオイヒニンEuchininともよばれた。
[幸保文治]
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…アマゾニアの原住民文化は,いずれも周囲の環境に対する正確な知識に裏打ちされており,その中には文明人にも有用なものが少なくない。例えばマラリアの治療薬キニーネもアマゾニア原住民の用いる薬草であった。アマゾニア原住民はこれらの知識のうえに豊富な神話,儀礼,宇宙論の体系をつくりあげてきたのである。…
…南アメリカのアンデス山脈に自生するアカネ科キナ属の薬用樹木で,約40種を含む植物群のうち,類似した数種が利用される。樹皮をキナ皮(英名Jesuit’s bark,cinchonae cortex)とよび,それから得られたキニーネは熱病,とくにマラリアの特効薬として知られている。古くからインカ人がその樹皮をキナ・キナquina‐quina(kina‐kina)と称して熱病に用いていた。…
…これらコカインおよびコカイン代用薬が狭義の局所麻酔薬であり,真性局所麻酔薬とも呼ばれるが,次のようなものも広義には局所麻酔薬に含まれる。すなわち,(1)エーテル,クロロホルムなど本来は全身麻酔薬であるが局所麻酔作用を有するもの,(2)疼痛性麻酔薬 石炭酸(フェノール),メントール,キニーネなど局所に投与すると,初めは知覚神経刺激による疼痛を生ずるが,後に麻痺を起こすもの,(3)寒冷麻酔薬 沸点の低いエーテル,クロロホルム,クロルメチルなど気化熱を奪うことによって局部凍結をきたし知覚を鈍化させるもの,などである。麻酔【福田 英臣】。…
… 化学的にはさまざまな系統の化合物があるが,歴史的にみて最も古くから使われた薬物としては,17世紀にヨーロッパに伝えられた南アメリカ産の植物キナの樹皮,キナ皮をあげることができる。キナ皮は,アルカロイドに属する化合物キニーネを有効主成分として含有する生薬である。一方,サリチルアルコールの配糖体サリシンを含むヤナギの樹皮もまた,古くから世界各地で使われた歴史的な解熱鎮痛性薬物であった。…
…しかし,それらは,激しい作用のために有害で危険なものか,またはほとんど効果がないかのいずれかであった。キニーネ,麦角アルカロイドなども用いられた。子宮収縮薬のほか,下剤で腸運動を亢進して反射的に子宮を収縮させ堕胎をおこす方法もとられたが,副作用がつよく母体にとって危険をともなった。…
※「キニーネ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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