改訂新版 世界大百科事典 「子宮収縮薬」の意味・わかりやすい解説
子宮収縮薬 (しきゅうしゅうしゅくやく)
uterotonics
分娩の誘発または産後の子宮収縮・止血のために,子宮筋を収縮させる目的で用いられる薬物。脳下垂体後葉ホルモンと麦角アルカロイド製剤が用いられるが,最近になってプロスタグランジンも用いられるようになった。脳下垂体後葉ホルモンのうちオキシトシンは,9個のアミノ酸からなるペプチドで,子宮収縮作用が強く(似た構造をもつバソプレシンは血圧上昇作用および抗利尿作用が強い),陣痛の弱いときに分娩促進薬として繁用される。麦角は,ライムギの根に寄生する子囊菌類麦角菌の菌核の乾燥体で,代表的な成分はエルゴタミンとエルゴメトリンである。子宮を収縮させ,その作用はエルゴメトリンが強い。エルゴメトリンに対する子宮の感受性は,妊娠終期,分娩直後において大きい。子宮収縮薬として出産後の子宮収縮に用いる。プロスタグランジンには種類が多いが,プロスタグランジンE2およびF2αが分娩の誘発および促進に用いられる。これらの子宮収縮作用は自然分娩の機序と関係が深く,子宮筋収縮は自然の陣痛と類似のパターンを示すといわれる。
執筆者:福田 英臣
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報