化学辞典 第2版 「塩化クロミル」の解説
塩化クロミル
エンカクロミル
chromyl chloride
CrO2Cl2(154.90).二塩化二酸化クロム(Ⅵ)ともいう.アルカリ金属(ナトリウム,カリウムなど)の二クロム酸塩と塩化物とを混合し,これに濃硫酸を加えて蒸留するか,酸化クロム(Ⅵ)と乾燥した塩化水素の作用で得られる.融点-96.5 ℃,沸点117 ℃.臭素に似た血赤色の液体で,湿った空気中で発煙する.水には溶けにくいが,すみやかに加水分解を受けてクロム酸を生じる.二硫化炭素,クロロホルム,四塩化炭素に可溶.熱や光によって分解される.強い酸化剤で,有機物とは爆発的に反応することもある.オレフィン類の重合触媒,炭化水素の酸化剤に用いられる.そのほか,染料やクロムの錯体の製造,塩化クロミル反応にも用いられる.塩化クロミル反応:Cl- を含む試料に二クロム酸カリウムと硫酸を加えて加熱すると血赤色の塩化クロミルの蒸気を発生する.これを水中に導き水酸化アルカリを加えると黄色のクロム酸アルカリの溶液となる.この溶液を酸性にしたのち,エチルエーテルと過酸化水素を加えて振ると青色の過クロム酸がエーテル層に移る.ヨウ素や臭素では揮発性のクロム化合物を生成しないので,この反応は Cl- の検出反応として利用される.有毒.[CAS 14977-61-8]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報