ボクシング(読み)ぼくしんぐ(英語表記)boxing

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デジタル大辞泉 「ボクシング」の意味・読み・例文・類語

ボクシング(boxing)

二人の競技者がロープを張って囲んだ四角の競技場(リング)で相対し、両手にグローブをはめて上半身を打ち合い、ノックアウトを目的に勝敗を争う競技。体重別の階級制。拳闘。
[補説]ボクシングの体重別階級
アマチュアAIBA
階級/体重エリート・ユース*1 男子エリート・ユース*1 女子オリンピック 女子ジュニア*2 男子・女子
ピン級42キロ超 46キロまで
ライトフライ級46キロ超 49キロまで45キロ超 48キロまで46キロ超 48キロまで
フライ級49キロ超 52キロまで48キロ超 51キロまで48キロ超 51キロまで48キロ超 50キロまで
ライトバンタム級50キロ超 52キロまで
バンタム級52キロ超 56キロまで51キロ超 54キロまで52キロ超 54キロまで
フェザー級54キロ超 57キロまで54キロ超 57キロまで
ライト級56キロ超 60キロまで57キロ超 60キロまで57キロ超 60キロまで57キロ超 60キロまで
ライトウエルター級60キロ超 64キロまで60キロ超 64キロまで60キロ超 63キロまで
ウエルター級64キロ超 69キロまで64キロ超 69キロまで63キロ超 66キロまで
ライトミドル級66キロ超 70キロまで
ミドル級69キロ超 75キロまで69キロ超 75キロまで69キロ超 75キロまで70キロ超 75キロまで
ライトヘビー級75キロ超 81キロまで75キロ超 81キロまで75キロ超 80キロまで
ヘビー級81キロ超 91キロまで81キロ超80キロ超
スーパーヘビー級91キロ超
*1 エリートは19歳以上40歳以下、ユースは17~18歳。ユースの選手はエリート部門の試合にも出場可能。
*2 ジュニアは15~16歳。

プロWBAWBC
階級体重*7
アトム級*1102ポンド(約46.27キロ)以下
ミニマム級*2105ポンド(約47.63キロ)以下
ライトフライ級108ポンド(約48.99キロ)以下
フライ級112ポンド(約50.80キロ)以下
スーパーフライ級115ポンド(約52.16キロ)以下
バンタム級118ポンド(約53.52キロ)以下
スーパーバンタム級122ポンド(約55.34キロ)以下
フェザー級126ポンド(約57.15キロ)以下
スーパーフェザー級130ポンド(約58.97キロ)以下
ライト級135ポンド(約61.23キロ)以下
スーパーライト級140ポンド(約63.50キロ)以下
ウエルター級147ポンド(約66.68キロ)以下
スーパーウエルター級154ポンド(約69.85キロ)以下
ミドル級160ポンド(約72.57キロ)以下
スーパーミドル級168ポンド(約76.20キロ)以下
ライトヘビー級*3175ポンド(約79.38キロ)以下
クルーザー級*4200ポンド(約90.72キロ)以下
ブリッジャー級*5200ポンド(約90.72キロ)超 224ポンド(約101.6キロ)以下
ヘビー級*6200ポンド(約90.72キロ)超
*1 WBC女子のみ。*2 WBCではストロー級と呼ぶ。*3 WBAのみ。*4 男子のみ。
*5 WBCのみ。
*6 WBA女子は175ポンド(約79.38キロ)超、WBC女子は168ポンド(約76.20キロ)超。
*7( )内は規定の体重をキログラムに換算したもの。
[類語]体技格闘技格技レスリング

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精選版 日本国語大辞典 「ボクシング」の意味・読み・例文・類語

ボクシング

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] boxing ) ふたりの競技者がリング上で両手にグローブをはめて上半身を打ち合い、勝敗を争うスポーツ。拳闘(けんとう)
    1. [初出の実例]「或はボクシングとて両人掌にて突合鼻血の出る迄相争ひ」(出典:古川正雄の洋行漫筆(1874)〈古川正雄〉)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボクシング」の意味・わかりやすい解説

ボクシング
ぼくしんぐ
boxing

スポーツ競技の一種。2人の競技者が両手にグローブ(グラブ)をつけ、ナックル・パート(拳(こぶし)の親指を除く第2関節と第3関節の間の部分)で相手を攻撃する。防御は手、腕、肩、上体の動きなどで行う。この攻防の技(わざ)を競い合うスポーツである。拳闘(けんとう)ともいわれていた。競技者(ボクサーboxer)は体重制により同一階級の範囲内で競技を行う。

 ギリシア語で拳のことをpygmaeというが、ボクシングは古代にはPyx(ギリシア語)と記されていたことがわかっている。現代は英語のボクシングboxingで世界的に通用する。ボックスboxには、打つことのブローblow、ストロークstroke、耳や頬(ほお)や頭の横などを平手で打つことのスラップslap、拳で打つことのカフcuff、といった意味があり1440年ごろに使われていた。1560年代になるとボックスは明らかに拳で戦うことを意味するようになり、そのボックスに動作「……すること」の意を表す接尾語ingを加えたものがボクシングboxingである。

[渡辺政史・日本ボクシング連盟審判部 2020年6月23日]

歴史

スポーツのなかでもボクシングの歴史は古く、古代エジプトの象形文字によると、エジプト王の兵士の訓練として行われていた。紀元前20世紀(ミノア時代)の地中海東部のクレタ島ではスポーツが盛んであったが、この島のハギア・トリアダ宮殿跡から出土した杯にボクサーの絵が刻まれている。

 また、エーゲ海域へも伝えられた。サントリン島(古代名テラ島)で発掘されたフレスコ壁画(紀元前2000年紀なかごろのもの)には「ボクシングの少年」が描かれている。攻撃する右手に細い革紐(かわひも)を巻きつけ、左手は防御に使われていたらしい(アテネ国立考古博物館蔵)。

[渡辺政史・日本ボクシング連盟審判部 2020年6月23日]

古代ボクシングの変遷

古代ボクシングの史料(紀元前20世紀~紀元後2世紀)は壺絵(つぼえ)や彫刻などに多く残されている。この時代のグローブは子牛の皮を細長く切ったもので、拳から肘(ひじ)にかけて巻きつけていた。当時は体重制やラウンドなどの区分もなく、勝敗は一方が指を上に向けて敗北を示すまで続けられた。古代ボクシングはこの革紐の変遷により、3期に分けて特徴づけられる。

 第1期(紀元前20世紀~紀元前6世紀)は柔らかい革紐の時代。ボクシングは古代オリンピック第23回大会(紀元前688年)に登場する。第41回大会(紀元前616年)から少年の部が加わった。

 第2期(紀元前6世紀~紀元前4世紀)は固い革紐(ギリシアセスタス)の時代である。古代ボクシングの最盛期といわれ、競技者の技術、体力ともに充実していた。ギリシアの詩人ホメロスは、『イリアス』『オデュッセイア』のなかに当時のボクシング競技を描写している。

 第3期(紀元前4世紀~紀元後4世紀)はローマンセスタスとよばれ、ナックル(手指の関節)の部分に鉄板や鋲(びょう)をつけたものとなった。このグローブは手の保護というよりは武器となった。この結果ボクシングのスポーツ性は失われ、残忍な死闘と化した。社会的支持もなくなり、古代オリンピック293回大会の廃止に伴って古代ボクシングの終末となった。

[渡辺政史・日本ボクシング連盟審判部 2020年6月23日]

近代ボクシング

近代ボクシングは18世紀にイギリスで始まった。1719年ジェームズ・フィッグJames Figg(1695―1734)は、棒や剣を用いずに拳のみで闘う方法を考案した。最初はグローブはなく素手であった。彼が古代ギリシアのボクシングの影響を受けたか否かは明らかでない。1743年フィッグの高弟のジャック・ブロートンJack Broughton(1704―1789)は7条のボクシング・ルール「ブロートン・コード」を作成する。このブロートン・コードはリングの規定で、ダウンの30秒制、観衆の規制、フェアプレーの精神などのルールが示された。またブロートンは1747年にはボクシング用のグローブを考案して練習に使用した。グローブの使用はボクシングの安全性を高め、スピードと技術を必要とするボクシングへと発展した。彼はロンドン郊外のオックスフォード街に初のボクシングスクールを開校し、貴族にも指導を行い、当時の上流社会との接触を保った。

 1865年、第9代クインズベリー侯爵John Douglas, 9th Marquess of Queensberry(1844―1900)は、当時のイギリスのアマチュア競技協会のジョン・グラハム・チェンバースJohn Graham Chambers(1844―1890)に命じて、12条からなる「クインズベリー・ルール」を作成した。このルールが現在のアマチュアボクシング・ルールの基盤となった。この内容はラウンドの3分、インターバル(休憩)の1分、ダウンの10秒制、グローブ使用の義務づけ、24フィート(約7.3メートル)四方の四角いリングの使用などであった。体重の階級はL級が130ポンド(約59.0キログラム)以下、M級が130ポンド超~156ポンド(約70.8キログラムまで)、H級が156ポンド超の3階級であった。このルールの確立は競技のスピード化、技術の多様性、安全性の確保などをもたらした。ボクシングの社会的評価も高まり、ウェストミンスターケンブリッジなどのパブリック・スクールでも子弟教育のためにボクシングが行われるようになった。

 イギリスで発祥した近代ボクシングは、その後ヨーロッパやアメリカ大陸へ伝わり発展する。ヨーロッパではイギリスの伝統を受け継ぎヨーロピアンスタイルを確立し、アマチュアボクシングの主流となった。アメリカではアメリカンスタイルとして発展し、プロフェッショナルボクシング(プロボクシング)の全盛期をつくりあげた。

[渡辺政史・日本ボクシング連盟審判部 2020年6月23日]

近代オリンピック

近代オリンピック大会にボクシングが登場したのは、1904年の第3回セントルイス大会からである。このときの参加国はアメリカだけで、7階級であった。

 オリンピックのボクシングは20世紀に組織的、技術的に大きな発展を遂げ、試合内容は、強打やスタミナに頼らず正確な打撃と安定した防御が目だつようになってきた。2008年の第29回北京(ペキン)大会では78か国、286名のボクサーが参加し、長い間、アメリカ、ロシア、キューバなどが強豪であったが、この大会ではアジア4か国が5階級で優勝するなど、アジアの躍進を示した。また女性や子供のボクシングも活発となり、2012年の第30回ロンドン大会から初めて女子のボクシングが正式種目として認められた。

 2016年の第31回リオ・デ・ジャネイロ大会には、それまで禁止されていたプロボクサーの参加が認められ、国際ボクシング協会(AIBA。後述)が設立したプロによる団体AIBAプロボクシング(APB:AIBA Pro Boxing)やワールド・シリーズ・オブ・ボクシング(WSB:World Series of Boxing)の上位選手、予選で出場資格を獲得したプロボクサーがオリンピックに参加した。また、男子はヘッドギアが廃止され(女子は着用)、採点方法に10(テン)ポイント・マスト・システム(勝っているほうにかならず10点をつける方法)が採用されるなどの変更がなされた。

 2020年開催予定であった第32回東京大会(2021年開催)については、AIBAが国際オリンピック委員会(IOC)からガバナンス(統治)・財政問題・審判問題等により前年度からサスペンド(一時停止)を受ける状態となった。そのため、東京大会の大陸予選、世界最終予選と本戦はIOC特別委員会が組織され、大会の準備運営を行った。

[渡辺政史・日本ボクシング連盟審判部 2022年2月18日]

日本のボクシング

日本のボクシングは、アメリカでボクサーとして活躍した渡辺勇次郎が東京・下目黒(しもめぐろ)に1921年(大正10)日本拳闘倶楽部(クラブ)を創設したのが始まりである。

 オリンピックでは、1960年(昭和35)の第17回ローマ大会で田辺清(たなべきよし)(1940― )が銅メダル(フライ級)を獲得し、日本人初のメダリストになった。続く1964年の第18回東京大会では桜井孝雄(さくらいたかお)(1941―2012)が初の金メダル(バンタム級)、1968年の第19回メキシコ大会では森岡栄治(もりおかえいじ)(1946―2004)が銅メダル(バンタム級)を獲得。その後2012年(平成24)の第30回ロンドン大会で村田諒太(むらたりょうた)(1986― )が金メダル(ミドル級)、清水聡(しみずさとし)(1986― )が銅メダル(バンタム級)を獲得し、日本では44年ぶりのメダル獲得となった。また、2020年(令和2)第32回東京大会(2021年開催)で、男子は田中亮明(たなかりょうめい)(1993― )が銅メダル(フライ級)を獲得。今大会がオリンピック初出場となった女子は、並木月海(なみきつきみ)(1998― )が銅メダル(フライ級)、入江聖奈(いりえせな)(2000― )が金メダル(フェザー級)を獲得。各階級で日本人初のメダリストとなった。

[渡辺政史・日本ボクシング連盟審判部 2022年2月18日]

組織

国際統括組織

アマチュアボクシングには、国際統括組織として国際ボクシング協会(International Boxing Association。略称、AIBA)がある。前身は1920年の第7回オリンピック・アントワープ大会時に設立された国際アマチュアボクシング連盟(FIBA:Fédération Internationale de Boxe Amateur)であるが、1946年に国際アマチュアボクシング協会(AIBA:Association Internationale de Boxe Amateur)に改組された。2006年に「アマチュア」を外した現名称に改称されたが、略称は現在もAIBAを使用している。本部事務局はスイスのローザンヌにあり、2016年時点の加盟数は200の国と地域。AIBAは世界を統括し、世界選手権とオリンピック予選の主催と、オリンピック、大陸選手権、大陸マルチスポーツイベント(アジア大会等)、コモンウェルスゲームズコモンウェルスイギリス連邦〉に属する国と地域が参加する国際的なスポーツ競技会)を主管する(注:第32回オリンピック・東京大会にかかわる予選と本選はすべてIOC特別委員会が統括する)。

 プロフェッショナルボクシングには、主要な二つの組織があり、一つは世界ボクシング協会(WBA:World Boxing Association)で、もう一つが世界ボクシング評議会(WBC:World Boxing Council)である。WBAは、アメリカを中心として各国のボクシングコミッションを単位に1962年に設立され、本部はパナマのパナマ市にある。WBCはメキシコ、ラテンアメリカ、アジア、ヨーロッパ、イギリス、北アメリカの各地域を単位として1963年に設立、本部はメキシコのメキシコ市にある。この二つの組織が認定する世界チャンピオンが存在し、この世界チャンピオン同士で統一選手権を決定することもある。ほかに、世界ボクシング機構(WBO:World Boxing Organization)、国際ボクシング連盟(IBF:International Boxing Federation)があり、WBA、WBCと合わせてプロボクシング主要4団体とよばれている。

[渡辺政史・日本ボクシング連盟審判部 2020年6月23日]

日本の組織

アマチュアボクシングには、一般社団法人日本ボクシング連盟(JABF:Japan Amateur Boxing Federation)がある。1926年に全日本アマチュア拳闘連盟として設立され、1971年(昭和46)日本アマチュアボクシング連盟に、2013年に現名称に改称した。本部は東京・渋谷区に置いていたが、2019年(令和1)に東京都・新宿区のJapan Sport Olympic Squareに移転した。

 プロフェッショナルボクシングには、一般財団法人日本ボクシングコミッション(JBC:Japan Boxing Commission)がある。1952年に設立され、本部は東京・文京区にある。

[渡辺政史・日本ボクシング連盟審判部 2020年6月23日]

競技方式

競技方式はアマチュア、プロフェッショナルで方式が異なる。以下、2019年のJABFルールにより、アマチュアボクシングの概要を説明していく。

[渡辺政史・日本ボクシング連盟審判部 2020年6月23日]

階級・競技年齢

ボクシングでは体重により階級を定め、階級の同じ者同士が試合を行う。さらにオリンピックを除き、年齢によって部門が分かれる。

[日本ボクシング連盟審判部 2020年6月23日]

年齢による区分

国内大会および国際大会における年齢区分は、以下のようになっている。

〔国内大会における呼称と年齢区分〕
(1)UJ小学生の部:10~12歳である小学5年生および6年生の男子・女子(UJ:アンダージュニア)
(2)UJ中学生の部:12~15歳である中学1年生から3年生の男子・女子
(3)ジュニアの部:全国高等学校体育連盟(高体連)・国民体育大会(国体)規定による男子・女子
(4)シニアの部:19~40歳の男子・女子(19歳は年度内に19歳になる者、40歳は誕生年を基準とする)

〔国際大会における呼称と年齢区分(男・女)〕
 競技者の年齢は誕生年を基準とする。

(1)ジュニア:15~16歳
(2)ユース:17~18歳
(3)エリート:19~40歳(オリンピックでは、この年齢区分の競技者に出場資格がある)
[日本ボクシング連盟審判部 2020年6月23日]

体重による区分

国内大会およびオリンピックにおける体重別階級は、以下のようになっている(単位はkg:キログラム。以下キロと略)。

〔UJ小学生の部(男・女)〕
(1)31キロ級:28キロ超31キロまで
(2)34キロ級:31キロ超34キロまで
(3)37キロ級:34キロ超37キロまで
(4)40キロ級:37キロ超40キロまで
(5)43キロ級:40キロ超43キロまで
(6)46キロ級:43キロ超46キロまで
(7)49キロ級:46キロ超49キロまで
(8)52キロ級:49キロ超52キロまで
(9)56キロ級:52キロ超56キロまで

〔UJ中学生の部(男・女)〕
(1)33キロ級:30キロ超33キロまで
(2)36キロ級:33キロ超36キロまで
(3)39キロ級:36キロ超39キロまで
(4)42キロ級:39キロ超42キロまで
(5)45キロ級:42キロ超45キロまで
(6)48キロ級:45キロ超48キロまで
(7)51キロ級:48キロ超51キロまで
(8)54キロ級:51キロ超54キロまで
(9)57キロ級:54キロ超57キロまで
(10)60キロ級:57キロ超60キロまで
(11)64キロ級:60キロ超64キロまで
(12)68キロ級:64キロ超68キロまで
(13)72キロ級:68キロ超72キロまで

〔男子ジュニア・シニア〕
(1)ピン:44キロ超46キロまで(国内高校のみ適用)
(2)ライトフライ:46キロ超49キロまで
(3)フライ:49キロ超52キロまで
(4)バンタム:52キロ超56キロまで
(5)ライト:56キロ超60キロまで
(6)ライトウェルター:60キロ超64キロまで
(7)ウェルター:64キロ超69キロまで
(8)ミドル:69キロ超75キロまで
(9)ライトヘビー:75キロ超81キロまで
(10)ヘビー:81キロ超91キロまで
(11)スーパーヘビー:91キロ超

〔女子ジュニア・シニア〕
(1)ピン:43キロ超45キロまで(国内高校のみ適用)
(2)ライトフライ:45キロ超48キロまで
(3)フライ:48キロ超51キロまで
(4)バンタム:51キロ超54キロまで
(5)フェザー:54キロ超57キロまで
(6)ライト:57キロ超60キロまで
(7)ライトウェルター:60キロ超64キロまで
(8)ウェルター:64キロ超69キロまで
(9)ミドル:69キロ超75キロまで
(10)ライトヘビー:75キロ超81キロまで
(11)ヘビー:81キロ超

〔オリンピック男子〕
(1)フライ:48キロ超52キロまで
(2)フェザー:52キロ超57キロまで
(3)ライト:57キロ超63キロまで
(4)ウェルター:63キロ超69キロまで
(5)ミドル:69キロ超75キロまで
(6)ライトヘビー:75キロ超81キロまで
(7)ヘビー:81キロ超91キロまで
(8)スーパーヘビー:91キロ超

〔オリンピック女子〕
(1)フライ:48キロ超51キロまで
(2)フェザー:54キロ超57キロまで
(3)ライト:57キロ超60キロまで
(4)ウェルター:64キロ超69キロまで
(5)ミドル:69キロ超75キロまで
[日本ボクシング連盟審判部 2020年6月23日]

リング

リングは7.8メートルの正方形で、ロープ内は6.1メートルである。下から40・70・100・130センチメートルの高さに4本のロープを張る。滑りにくい素材のキャンバスで全床を覆わなければならないが、キャンバス地の色は青色とする。

[日本ボクシング連盟審判部 2020年6月23日]

用具

グローブ、バンデージ、服装、ヘッドギアなどすべてJABF公認の競技会には、AIBAおよびJABF検定品を使用しなければならない。男子シニア・ジュニアのウェルター級からスーパーヘビー級とUJ中学生60キロ級・64キロ級・68キロ級・72キロ級、UJ小学生56キロ級は12オンス(339グラム)グローブ、そのほかの階級はすべて10オンス(284グラム)グローブを使用する。

 服装は、男子は胸と背中を覆うランニングシャツと膝(ひざ)にかからない長さのトランクスを着用する。女子はノースリーブを含む短い袖のTシャツで、胸部にチェストガード(胸部プロテクター)を着用することも可能である。

 顔面や頭部保護のためにヘッドギアをかぶり、口の中の保護にマウスピース(ガムシールド)をくわえ、下腹部の保護にカッププロテクターを着用する(女子は任意)。ただし、国際大会の男子エリートおよび国内大会の男子シニアにおけるヘッドギア着用は2013年に禁止された。

 また、手の保護のために巻くバンデージは長さ2.5メートルから4.5メートル、幅は5.7センチメートルと定められている。国際大会の男女エリートとJABFが認めた男女シニアの試合ではハンドラップ(規定の長さのガーゼとテーピングを使用)またはバンデージとテーピングを併用することができる。

[渡辺政史・日本ボクシング連盟審判部 2020年6月23日]

競技時間

シニアは3分3ラウンド、ジュニアは2分3ラウンド、UJ小学生は1分30秒3ラウンド、UJ中学生は2分3ラウンドとする。プロボクシングの日本選手権は3分10ラウンド、東洋・太平洋選手権、世界選手権は12ラウンドである。いずれの場合も各ラウンドの間に1分間のインターバルがある。

[渡辺政史・日本ボクシング連盟審判部 2020年6月23日]

セカンド・審判員の人数

各競技者はセカンド(選手の介添えや指示を出したりする役。選手の安全のため、試合を棄権する権限をもつ。セコンドともいう)を3名までもつことができる。インターバルの間に2名がリングに上がることができ、そのうちの1名がロープ内に入ることができる。審判員の人数はレフリー(主審)が1名、ジャッジが5名か3名である。

[日本ボクシング連盟審判部 2020年6月23日]

競技の判決

(1)ポイント勝ち(WP:Win on points) 各ジャッジが与えた得点による多数決で決定する。

(2)棄権勝ち(ABD:Abandon) 競技者またはセカンドから棄権の申し出があったとき。

(3)レフリー・ストップ・コンテスト勝ち(RSC:Referee Stops Contest) 両競技者の間の実力に大差がある場合や、強打を受け、レフリーが危険と判断した場合、負傷などで競技の続行が不適当な場合などにレフリーが競技をストップさせ、相手を勝ちにする。

(4)レフリー・ストップ・コンテスト・インジャリー勝ち(RSC-I:Referee Stops Contest-injured) 反則打以外で負傷して競技が続けられないとき、ロー・ブロー(低打)後の処置規定による90秒のインターバル後に競技を再開できないとき。

(5)失格勝ち(DSQ:Disqualification) ファウル(反則)や1競技で3回の警告を受けるなどした場合は失格となり、相手の勝ちとなる。

(6)ノックアウト勝ち(KO:Knockout) ダウン後10秒以内に競技ができないとき。

(7)不戦勝(WO:Walkover) 相手がリングに現れないとき。

(8)特別な再試合(Extraordinary Rescheduling) 1ラウンド終了前までに競技者やレフリーの責任外(天災、観客の騒乱、リングの破損等)で競技ができなくなった場合は再試合を行う。1ラウンド終了以降は、それまでの採点により勝者を決める。

[日本ボクシング連盟審判部 2020年6月23日]

採点法

JABFの公認競技会はすべて、パーソナル・コンピュータ(PC)でAIBA認定ソフトを用いて、10ポイント・マスト・システムにより採点することを原則とする。PCを使用しない場合は、スコアリングペーパーによるマニュアル方式で採点する。

[渡辺政史・日本ボクシング連盟審判部 2020年6月23日]

採点基準

よく握ったグローブのナックル・パートによる打撃で、ターゲットエリア(ベルトラインより上の前面、側面の部分。ただし肩、腕の部分は除く)に、妨げられず、防御されずに直接当たったものをヒットとして得点打とする。また、反則は減点の対象となる。

 ジャッジは以下の条件により、両競技者の価値を競技規則に基づき自主的に判断する。

(1)ターゲットエリアへの質の高い打撃の数
(2)技術や戦術の優勢を伴って競技を支配している
(3)積極性
[渡辺政史・日本ボクシング連盟審判部 2022年2月18日]

得点の与え方

得点はラウンドごとに与えられる。

(1)10-9:接近したラウンド
(2)10-8:優勢に試合を進め勝者がはっきりわかるラウンド
(3)10-7:完全に優勢なラウンド
 なお、ダウンをとったことには特別な点数は与えられない。

[日本ボクシング連盟審判部 2020年6月23日]

反則行為

反則行為は正しいボクシングと競技の安全性を保つために厳しくチェックされる。ルールに違反した場合は注意や警告(減点)を受け、または失格となる。

〔1〕傷害の危険を伴う反則
(1)ロー・ブロー、ヘッディング、肘打ち、膝でける
(2)オープン・グローブ(拳を握らない)、グローブの内側、側面、手首、手の甲の部分で打つ。親指で目を突く
(3)相手の後頭部や背中、首の後ろ、腎臓のある場所を打つ
(4)ダウン中の相手を打つ
(5)危険性のあるベルトライン以下のダッキング(膝を曲げて上体をかがめる防御動作)
(6)ブレークの命令で後退せずに打つ
(7)リングロープの反動を利用して打つ
(8)ピボットブロー(体を1回転して打つ)
〔2〕ボクシングをできなくする反則
(1)クリンチ(接近戦の打ち合いで一方の競技者の両手が自由に動かせなくなった状態)の際に組み合って投げる
(2)相手にもたれかかったり、押したりする
(3)相手を引っ張る
(4)相手の身体や腕を押さえたり、抱えたりする
(5)相手の腕の下に手を押し入れる
〔3〕マナーに反する行為
(1)故意のダウン
(2)非礼的、挑発的言動
(3)レフリーに対する反抗的態度
(4)マウスピースを何回も落としたり、故意に吐き出したりすること
[渡辺政史・日本ボクシング連盟審判部 2020年6月23日]

攻防の技術

ボクシングの特性は顔面の加撃をルール上で認めている唯一のアマチュア・スポーツという点にある。したがって衝動的動作ではなく、鍛え抜いた身体と熟練の技、厳正なルールと人間の理性を必要とする。勇気や持久力も必要とするが、これが中心であってはならない。ボクシングの技術は攻防の技の関連により成り立つものである。

 攻撃には相手との距離によってストレート、フック、アッパー・カットなどがある。フットワークは相手との距離を保つために必要である。

 防御には手、腕、肩によるもの、上体の動きによるもの、フットワークによるものなどがある。

 攻撃、防御とも相手との距離や角度により使い分ける。攻防の動作は表裏一体であり、互いに関連してボクシングの技を形成する。競技はいかに「打たれずして打つ」かが勝利の鍵(かぎ)となる。したがって競技者の身体的・技術的特性に適した攻撃と防御法を習得しなければならない。

[渡辺政史・日本ボクシング連盟審判部 2020年6月23日]

『マリノス・アンドロニコス著、成田十次郎訳『古代オリンピック』(1981・講談社)』『浅見俊雄編『現代体育・スポーツ大系』第21巻(1984・講談社)』『藤野敏彦著『ボクシング入門』(1990・ベースボール・マガジン社)』『渡辺政史著『はじめてのボクシング』(1997・成美堂出版)』『Norman GardinerAthletics of the Ancient World(1978, Oxford University Press)』


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改訂新版 世界大百科事典 「ボクシング」の意味・わかりやすい解説

ボクシング
boxing

両手にグラブをはめた対戦者が,ロープを張ったリング上で打ち合って勝敗を決めるスポーツ。拳闘ともいう。


こぶしを固めてなぐり合うというボクシングの原型は,おそらく人類創生とともに存在していたであろう。アメリカのボクシング研究家のメンケFrannk G.Menkeはアダムとイブの子どもたちの兄弟げんかに始まるとしている。同じくグロンバックJohn G.Grombachは,現在のエチオピアにあたる地方で1万年以上前に行なわれた兵士の訓練としてのボクシングがエジプト,クレタ,ギリシアへ伝わって盛んになったのだという。古代オリンピックには前688年の第23回大会から登場している。しかし当時は現在のようなグラブもなく,こぶしの部分からひじにかけて革紐を巻き付けて防護し,打ち合いにはそのこぶしで行った。また,現在のボクシングのように多彩な動きとかスピードはなく,例えば左手は主として相手の攻撃を避けたり,相手の体勢を崩すために用いた。加撃は右手によるスイングとフックのようなものが多く,ストレートや胸や腹をねらうボディブローはなかった。ローマ時代になると見世物として職業化が進み,残虐を好んだ社会的風潮のもとで,金具やびょうを打ちつけたカエストゥスcaestusとよばれる革紐を前腕部に付けて戦うようになり,このため死を招くこともあった。しかし,この残虐な見世物も,ローマの衰退,キリスト教の普及とともに姿を消していった。ボクシングは古くはプジリズムpugilismとよばれているが,このプジリズムを初めてボクシングと称して普及に努めたのは13世紀イタリアの聖職者ベルナルディーネといわれる。しかし実際には17世紀後半にイギリスで復興するまでボクシングの空白期間がつづいた。

1681年に行われた肉切り職人(ブッチャー)と従僕(フットマン)のプジリズムが復興第1号の試合であるとイギリスのリスターDudley S.Listerは述べている。こうしてプジリズムはしだいに大衆の人気を集めたが,その普及に大きな役割を果たしたのはフィッグJames Figg(1695ころ-1734)である。彼は棍棒術,フェンシング,レスリングとプジリズムを総合した格闘技の大家として天下無敵の強敵ぶりを発揮したが,この格闘技を高尚な自己防衛術だとしてボクシングという名称を与え,ロンドンに教習所を創設して門弟を養成した。1719年,みずからイギリス初代のチャンピオンを名のり,アメリカやフランスの選手と懸賞試合を行ったりした。しかし当時はまだボクシングという呼称は確立せず,プジリズムとの併用が行われていたほか,ベアナックルファイトbare knuckle fightとかミルmillという呼称も行われていた。試合は屋外の芝土の上で行われたり,ファイブズコートとよばれる球技場で行われた。現在のラウンド制のようなものはなく,相手がダウンしたり,あるいは相手を投げ倒したりした場合に30秒の休みが与えられ,休み時間が終わると試合を再開する。起き上がれないときは敗北を宣告される。2人の審判が勝負の判定をし,2人の審判で判定できない場合は,試合役員の中からもうひとりを選んで判定した。試合の報酬も決められておりフィッグの高弟のひとりで第3代チャンピオンのブロートンJack Broughton(1704-89)は,初めてボクシングの競技規約をつくったことで知られるが,それによると勝者は賞金の3分の2を与えられた。ボクシング史上初めて成文化された〈ブロートン規約〉は7カ条からなり,1743年に発表された。ブロートンは競技規約をつくったばかりでなく,現在のグラブのもととなるマフラーという防具を創案するなどボクシングの近代化に貢献した。しかし,試合はあいかわらず素手で打ち合っていたため残酷な印象を与え,人身事故も多かったので,しばしば官憲による取締りを招き,イギリス国内での試合の開催ができないため,代わってベルギーとかフランスで行われた。正式の国際試合の第1号は,イギリスのT.セイヤーズとアメリカのJ.C.ヒーナンによるものだといわれる。なお現在の四角い競技台を〈リング〉とよぶのは,18世紀前半のジョージ1世の時代に,けんかの口論をリングと称する円形の場所で〈こぶし〉の勝負により解決させたことによるという。

 1860年ころ,第8代クインズベリー侯ダグラスJohn Sholto Douglas, Marquis of Queensberry(1844-90)の後援のもとにチェンバーズJohn G.Chambers(1843-83)がボクシングの改革に乗り出し,67年に新しいルールを発表した。レスリングの禁止,3分間戦って1分休むというラウンド制の採用,グラブの着用,判定による勝敗の決定などを盛り込んだ画期的なルールで,クインズベリー侯にちなんで〈クインズベリー規約〉とよばれた。この規約の最大の趣旨は,勝敗は肉体的な強弱で決めるものではなく,ボクサーの技術の優劣を審判がポイントで示し,それを集計して判定で勝敗を決めることにあった。しかし,この趣旨はアマチュアの試合には徹底したが,プロの試合では観客の意向もあり,また興行者の妨害もあって全面的な実施は遅れ,一般に浸透してボクシングが近代スポーツとして確立したのは19世紀末になってからである。グラブを着用しての試合はアメリカに先鞭をつけられ,1891年サンフランシスコで黒人選手ジャクソンPeter Jackson対コーベットJames J.Corbett(1863-1933)との間で行われた。19世紀末には体重による選手の階級分けも行われるようになった。92年アメリカのニューオーリンズで行われたコーベット対J.L.サリバンの世界ヘビー級タイトルマッチは〈クインズベリー規約〉による最初の公式試合として行われ,コーベットが初代チャンピオンの座についた。20世紀に入ると,アラスカのゴールドラッシュで幸運をつかんだG.リカードが興行主となり,アメリカがボクシングの黄金時代の中心となった。1921年J.デンプシーと挑戦者G.カルパンティエの試合は初の〈百万ドル・ゲート(興行収入)〉となり,26,27年のデンプシー対タニーGene Tunney戦はそれぞれ10万人以上の入場者を集めたばかりか,その映画でも世界各地のファンを熱狂させた。リカードの助手だったM.ジェーコブズはJ.ルイスを立役者にしたてたプロモーターであった。

 プロボクシングの世界統合機関としては,1921年にアメリカ,カナダを中心に全米ボクシング協会National Boxing Association(NBA)が創設され,62年に世界ボクシング協会World Boxing Association(WBA)となった。しかし63年にWBAの諮問機関として発足した世界ボクシング評議会World Boxing Council(WBC)は,WBAのアメリカ中心の傾向に反発し,独自のランキング,チャンピオンを公認するようになった。83年には国際ボクシング連盟Intemational Boxing Federation(IBF),88年には世界ボクシング機構World Boxing Organization(WBO)が生まれ,乱立状態となった。なお,近年は女子のボクシングも盛んとなり,WBA,WBCともに女子タイトルを設けている。一方,アマチュアは1904年のセント・ルイス・オリンピック大会から正式種目となり,国際アマチュア・ボクシング連盟Association Intenationale de Boxe Amateur(AIBA)も結成された。2007年現在,加盟国・地域数は195である。現在,ボクシングが直面している課題は,強打を受けて脳障害を起こす問題をいかに解決するかということだが,周到な医事管理と,危険だとみたら試合を中止させて防止する以外に,決め手はないようである。

日本では,1922年アメリカで技術を習得した渡辺勇次郎(1889-1956)が東京下目黒に日本拳闘倶楽部(クラブ)を開設したのが始まりで,しだいに系統的に発展した。26年には全日本アマチュア拳闘連盟(現,日本アマチュアボクシング連盟)が創設され,28年アムステルダムの第9回オリンピック大会に岡本不二,臼田金太郎の両選手が初参加,32年AIBAに加盟,64年第18回オリンピック東京大会ではバンタム級の桜井孝雄が初の金メダルを獲得した。プロは昭和初期から興行を始めたが,本格的には1952年に日本ボクシング・コミッションが創設されてからである。同年NBA(したがって現在はWBA)に加盟,また東洋ボクシング連盟に加盟することで間接的にWBCにも加盟している。日本は軽量級に強く,52年白井義男が初の世界フライ級チャンピオンになって以来,ファイティング原田,大場政夫,具志堅用高など軽量級を中心に多くの世界チャンピオンが輩出している。

試合は4本(アマチュアは3本)のロープを張ったリングという競技台上で行われる。リング内には2人の選手とレフェリーの3人だけが入る。試合は時計係のゴングで始まり,3分間たつとまたゴングが鳴り,両選手は自分のコーナーに帰って1分休む。これが1回(1ラウンド)である。試合の回数は,プロでは4,5,6,8,10,12回戦,アマチュアでは3回戦(ジュニアは2分間3回戦)で,プロの日本選手権戦は10回戦,東洋太平洋選手権戦,世界選手権戦は12回戦で決定される。試合は,グラブをはめたこぶしで相手のあご,顔,体の腰部以上(顔と体は正面と側面)を打ち,あるいは相手のパンチを防御しながらポイントを競い合うことで行われる。しかし,規定の時間内に相手をパンチで倒し,相手が10秒間に起き上がれないときはノックアウト(KO)勝ち,実力が段違いだったり,一方の選手の負傷で試合が続行できず,レフェリーが試合中止を命じたとき,アマチュアはレフェリーストップコンテスト(RSC),プロはテクニカルノックアウト(TKO)勝ちという。反則はアマチュアのほうがプロよりきびしくとり,ポイントの減点あるいは失格となる。試合の審判は,プロはレフェリーと2人のジャッジが行うが,世界タイトルマッチなどではレフェリーは参加せず,3人のジャッジで行う場合が多い。アマチュアの場合はレフェリーは採点せず,5人または3人のジャッジが行う。採点法は,プロは10点減点法,5点減点法などが一般的であり,アマチュアは20点減点法によるが,国際大会ではジャッジが有効打と認めた数をコンピューターで集計し,ポイントの多い者を勝者とする方法が採られている。各回ごとに採点し,試合終了後の総得点の多い方を勝ちとし,採点者の多数決で勝敗を決める。そのほかプロには毎ラウンドどちらが勝ったかを決めるラウンド法もある。プロは引分けがあるが,アマチュアは同点でもどちらかを勝者とする。

 試合は体重で区別した階級別に行う。プロでは試合開始8時間前に計量し,超過したものは2時間後に再計量が許され,アマチュアは試合当日の8~10時の指定時刻に1回だけの計量が行われる。グラブは,プロは8オンス(227g)または10オンス(283g),アマチュアは10オンス(ジュニアは階級により10か12オンス),バンデージ(手に巻く包帯のことで,立会いのもとに控室で巻く)にも規定がある。服装は,スパイクのない柔軟なシューズと靴下をはき,プロではトランクスのみ,アマチュアではランニングシャツとトランクス(上下が同色の場合はベルトラインの明瞭な色別が必要),ヘッドギアを着用する。

ボクシングのコラム・用語解説

【ボクシング用語】

アウトボクシング
相手から適当な距離だけ離れ,フットワークを利して相手の攻撃を避けながら,すきをみてストレートなどを打つ攻撃法。テクニックを主体とするボクサータイプの選手に多い。
アッパーカット
体を低く構え,ひざと腰のばねを使って上部に向かって突き上げる打撃法。
アップライトスタイル
上半身をそらせ,あごを引き,両手を高く,両足はやや広く開いた構え方。
インファイティング
両ボクサーが互いに接近して打ち合うこと。こういう戦い方を得意とするボクサーをインファイターといい,テクニックより強いパンチ力を武器とするパンチャータイプの選手に多い。
ウィービング
上体を低くし,左右に動いて相手のパンチをかわす防御法。
エルボーイング
ひじを使って相手を打つことで,反則の一種。
オープンブロー
ヒーリングともいう。グラブを開いて内側の部分で打つこと。反則の一種。
カウンターブロー
相手が打ってくるのを待ち,それより一瞬早く迎え打つ攻撃法。相手と自分の力がプラスされしばしばKOにつながる効果的な戦法。相手が左(右)ストレートを打ってきたとき,その腕越しに右(左)フックをあごに打ち込むカウンターブローをクロスカウンターという。
ガード
両ひじを体に密着させてボディをカバーし,片手を前に出し,もう一方の手であごをカバーする防御の基本。
カバーリングアップ
背を丸め,両手で頭を抱え込み,相手の攻撃を避ける防御法。長くこの姿勢を続けると注意され,反則にとられることがある。
キドニーブロー
相手の腎臓部分を,故意に背面から打つことで,反則の一種。
クラウチングスタイル
背を丸め,前かがみになった構え方。パンチャータイプの選手に多い。
クリンチ
相手に抱きつく防御法。故意のクリンチは反則にとられる。クリンチしている選手を分けることをブレークという。
サミング
グラブの親指部分で相手の目を突くこと。反則の一種。
ジャブ
前方に構えた手または腕を,こまかく連続的にまっすぐのばし,相手の顔面やあごを突く基本的な打撃法。
スイング
腕を側面から半円を描くように横振りに大きく打つ打撃法。
スウェーバック
相手のパンチを,足の位置は動かさずに上体をそらせて避ける防御法。
ストレート
右でも左でも,グラブをまっすぐ前方に向かって突き出し,相手の急所を打つパンチ。
スリッピング
相手のパンチを顔や体をわずかにすべらして避ける防御法。
ダウン
足の裏以外の体のどの部分でもカンバスにふれている状態。相手のパンチで倒れたダウンをノックダウン,足をすべらせて倒れたダウンをスリップダウンという。また,倒れたり膝や手をカンバスに触れなくても,グロッキーになってリング内をふらついたり,ロープにもたれたり(ロープダウン)する場合もダウンとなる。
ダッキング
アヒルが水面から潜るように頭を下げ,相手のパンチを避ける防御法。
ドクターストップ
試合に立ち会っている医師が選手を診察し,負傷その他の身体障害によって試合の続行は有害であると判断した場合,試合中止を命ずること。かつては医師に権限があったが,現在ではレフェリーに意見を申し述べるだけで,TKOにするかどうかはレフェリーの権限である。
ナックルパート
こぶしを握った正面の四角形の部分で,パンチを当てる場所。これ以外のどの部分を当てても反則になる。
ノックアウト
KO(ケーオー)ともいう。パンチが決まって選手がダウンし,レフェリーがカウント10(10秒間)しても起き上がれない状態のことで,ダウンさせた選手が勝者となる。試合中に一方の選手がひどい負傷をし,試合継続が不可能な場合,勝負が一方的になってレフェリーが劣勢の選手の敗戦を宣告した場合,敗者はアマチュアではRSC負けとなり,プロでは前者がTKO負け,後者がKO負けとなる。またプロでは,ラウンド開始のゴングが鳴って10秒以上コーナーから選手が立たなかった場合,1ラウンド中に3回の有効なダウンがあった場合,ラウンド中にチーフセコンドがタオルを投入したり休憩中にチーフセコンドから棄権の申入れがあった場合,すべてKO負けとなる。
バックハンドブロー
手の甲の部分で打つパンチ。反則の一種。
バッティング
頭,額,肩など体の部分を相手にぶつける行為で,反則の一種。
パーリング
相手のパンチを腕とか手で払いのける防御法。
フック
手,腕を釣針のように内側に曲げ,そのまま腰と肩を打つ方向に回転させて打つ効果の大きい打撃法。
ブロッキング
相手のパンチを手,腕,肩などで受け止める防御法。
ヘッディング
頭で突く行為で,反則の一種。
ヘッドブラッシ
クリンチなどの場合,頭を相手の顔面にブラシをかけるようにこすりつける行為。反則の一種。
ホールディング
相手の腕とか体を,自分の腕で抱える行為で,反則の一種。
ラビットパンチ
相手の耳の後部を故意に打つことで,反則の一種。ウサギを殺すのに,この部分を打つことが語源。
リーチ
こぶしの届く範囲,つまり手の長さに相当する。
ローブロー
ベルトライン以下を打つことで,反則の一種。
ワンツーブロー
右,左と連続的に早く打つパンチで,基本的な攻撃法。
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百科事典マイペディア 「ボクシング」の意味・わかりやすい解説

ボクシング

拳闘(けんとう)とも。両手に革製のグラブをはめた二人の競技者がロープを張ったリング上で互いに打ち合って勝敗を決する競技。オリンピック種目。相手をノックアウト(倒されてから10秒以内に立てない場合)するか,テクニカルノックアウト(TKO。試合続行不可能でレフェリーが試合中止を命じたとき。アマチュアではレフェリー・ストップ・コンテストという)で勝ち。規定回数終了後は判定により勝敗を決める。競技者は革製の編上げ靴をはき,トランクス(パンツ)をつける。ベルトライン(へその線)より下の部分や背部への加撃は反則。試合時間は1回3分で各1分ずつの休憩をはさんで,アマチュアの場合は3回戦を行うが,プロの場合,最低4回戦から最高15回戦が行われている。体重によりアマチュアでは,スーパーヘビー級からライトフライ級まで10階級に,プロではヘビー級からミニマム級(ストロー級などともいわれる)まで17階級に分かれている。女子のプロボクシングは団体によって異なり,ミニマム級の下にアトム級(ライトミニマム級)が設定されたり,スーパーミドル級より上の階級がない場合もある。プロボクシングの世界統合機関には世界ボクシング協会(WBA)と世界ボクシング評議会(WBC)などがある。オリンピックでは1904年のセントルイスオリンピックで正式種目となる。2012年のロンドンオリンピックから女子も正式種目となった。階級・重量などは再編を重ねたが,現在は男子はフェザー級が廃され10階級,女子はフライ級・ライト級・ミドル級の3階級のみである。出場資格は17歳から34歳まで。伝統的にアメリカが強豪でキューバが続いている。日本は,1960年のローマオリンピックのフライ級で田辺清が銅,1964年の東京オリンピックで桜井孝雄が金メダルを獲得。1968年のメキシコシティーオリンピックでバンタム級森岡栄治が銅を獲得。その後長くメダリストが出なかったが,2012年のロンドンオリンピックでミドル級で村田諒太が金メダル,バンタム級で清水聡が銅を獲得した。世界的にみるとオリンピックメダリストでその後プロに転向して世界チャンピオンになった選手もいる。
→関連項目白井義男

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ボクシング」の意味・わかりやすい解説

ボクシング
boxing

両手にグラブをはめた2人の競技者が,リング上で定められた攻撃法により上半身を打ち合い,勝敗を決める競技。古代ギリシアでは,前 688年の古代オリンピック競技大会から公式競技に加えられた。 1719年イギリス初代チャンピオンとなったジェームズ・フィグらによって上層階級の間にも普及して人気を得て,1743年にはブロートンルールの制定によりスポーツとしてのボクシングが確立した。 1839年ロンドン懸賞試合ルールが制定され,ロープで囲まれた約 7.3m平方の正方形のリングが採用された。 1867年クイーンズベリールールが成立,グラブの使用など諸ルールが整備され,1924年には国際アマチュアボクシング連盟が設立された。日本への渡来は 19世紀中頃~20世紀初頭 (明治年間) といわれ,はっきりしない。しかし組織立ったスポーツとしてボクシングは 1921年にアメリカ合衆国から入り,1926年アマチュアとプロが分離,全日本アマチュア拳闘連盟が設立された。リングの広さはプロ 5.47~7.31m平方,アマチュア 6.1m平方で,キャンバスで床面を覆っている。競技者はグラブをつけ,皮製の編上げ靴,トランクスを着用。アマチュアには安全のため,ヘッドギアとランニングシャツの着用も義務づけられている。試合は体重による階級別で行ない,プロは 17階級,アマチュアは 11階級 (ジュニアの部を加えると 12階級) に分かれる。試合時間は1ラウンド3分,間に1分の休憩をおく。アマチュアは3ラウンド (ジュニアは1ラウンド2分で3ラウンド) ,プロは4,6,8,10,12ラウンド行なわれる。勝敗の判定にはノックアウト KO,テクニカルノックアウト TKO (アマチュアはレフェリーストップコンテスト RSC) ,審判員の採点による判定,失格などがあり,1人のレフェリーと2人 (アマチュアは5人または3人) のジャッジが決定する。オリンピック競技大会などを統轄するアマチュアの国際団体は国際アマチュアボクシング協会 AIBAで,日本のアマチュア統一団体は日本アマチュアボクシング連盟である。 (→プロボクシング )

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知恵蔵 「ボクシング」の解説

ボクシング

拳にグローブをつけた選手2人が、5.47〜7.31m四方(プロの場合)のリング上で、上半身を打ち合ってダメージを与える競技。体重によって、プロ17、アマ12の階級制で実施。1920年頃に、世界ボクシング協会(WBA:World Boxing Association)が発足、63年に世界ボクシング評議会(WBC:World Boxing Council)が分離。83年に国際ボクシング連盟(IBF:International Boxing Federation)、88年には世界ボクシング機構(WBO:World Boxing Organization)がそれぞれWBAから独立し、世界四大機関と呼ばれる。各機関の王者同士によるタイトルマッチを、統一戦と呼ぶ。日本ボクシングコミッション(JBC:Japan Boxing Commission)はWBA、WBCのみを認定。試合は、3分1ラウンドで、4、5、6、8、10、12回の、いずれかのラウンド数で実施。世界タイトルマッチは12回戦。勝敗はノックアウト(KO=パンチを受けてダウンした選手が、10秒以内に起きあがれなかった場合)、テクニカルノックアウト(TKO=レフェリー、ドクターによる試合停止)で決し、最終ラウンドまで決着がつかないと判定となる。

(安藤嘉浩 朝日新聞記者 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

世界大百科事典(旧版)内のボクシングの言及

【民族スポーツ】より

…実にヨーロッパは民族スポーツの宝庫なのである。
[アフリカ]
 ナイジェリアとニジェールに住むハウサ族のボクシングは,互いに大きく右半身に構え,右手は後方に引き,左手は前方にかざしたスタイルで闘う。いわゆるグローブは右手にしかつけず,右攻撃,左防御の機能分化型である。…

※「ボクシング」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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