壊死性リンパ節炎

内科学 第10版 「壊死性リンパ節炎」の解説

壊死性リンパ節炎(白血球系疾患)

定義・概念
 壊死性リンパ節炎は,1972年にわが国の菊池,藤本らによりはじめて記載された原因不明のリンパ節炎で,亜急性壊死性リンパ節炎(subacute necrotizing lymphadenitis)という呼称もある.病理像では壊死像とともに大型のリンパ球と組織球の増殖を認め,核崩壊産物や赤血球の貪食像を伴う.炎症であるにもかかわらず,好中球の浸潤を欠くのが特徴である.原因・病因は不明だが,対症療法のみで軽快し予後は良好である.
疫学
 本症は10歳代から30歳代の若年者に好発する.男女別では女性に多く,男女比は1:2~1:3である.発症頻度などのデータはない.
臨床症状
 圧痛を伴う表在性リンパ節腫脹で発症し,深部リンパ節腫脹をみることはまずない.頸部リンパ節病変を最も高頻度に認め,頻度は80%以上に達する.発熱や上気道炎様症状を伴うこともある.約20%の例で薬疹様の皮疹を認めるほか,まれに肝脾腫を呈する例がある.
検査成績
 末梢血白血球数の減少(4000//μL以下)を約半数に認め,主体は顆粒球減少である.末梢血中に異型リンパ球が出現することもある.多くの例でLDHの高値やCRPの上昇がみられ,肝酵素の上昇も一部の症例でみられる.
病態生理
 本症の原因は不明である.自己抗体は証明されておらず,自己免疫疾患との関連は否定的である.感染症状を伴って発症する例が多いが,通常の抗生物質に反応を示さないこと,特定のウイルス抗体の上昇はないことから,感染症との証拠もない.
病理
 病理組織学的には,リンパ節に巣状ないし癒合し地図状に分布する壊死性病変が特徴的である.大型リンパ球と組織球が密に増殖し,細胞間に核崩壊産物が散見される(図14-10-19).大型リンパ球はCD8陽性のT細胞が主体である.壊死した核崩壊産物や赤血球を貪食する組織球が認められ,骨随でも軽度の血球貪食症候群を呈することがある.好中球がみられないのが特徴で,形質細胞や好酸球などの浸潤も少ない.
治療・経過・予後
 安静と対症療法が基本である.咽頭痛が強い場合はアセトアミノフェンなどの消炎鎮痛薬を投与する.一般的に経過は良好で,多くは1~3カ月以内に自然治癒する.
リンパ腫様胃腸症(竹内病)( lymphomatoid gastroenteropathy(Takeuchi disease)
 2006 年に米国のJaffe らが1例報告し,2010年にわが国の竹内らが10例を報告して疾患として認識された原因不明の消化管疾患である.病変の主座は胃であるが,まれに腸管病変も認める.症状はなく,健診など偶然の機会に診断されることが多い.胃癌術後例に多いが,これは内視鏡によるフォローアップ検査の機会が多いためと考えられている.内視鏡像では,1cm程度の平坦で辺縁整な隆起性病変を認め,表面に陥凹潰瘍を有することもある.病理像ではNK 細胞のシート状の増殖を特徴とするが,NK細胞リンパ腫で認められる広範な壊死像はなく,EBV 陰性である点が決定的に異なる.MALT リンパ腫のようにリンパ上皮性病変(lymphoepithelial lesion)を認めることもある.Helicobacter pylori は陽性例が多いが陰性例もあり,その病原意義は不明である.無治療ないし対症療法のみで病変は消失し予後は良好である.年余にわたり再燃・消退を繰り返す例もある.頻度などは明らかでない.疾患の本態も,腫瘍性か反応性か明らかでない.[鈴木律朗]
■文献
菊池昌弘,住吉慶明:組織球性壊死性リンパ節炎(菊池・藤本病).病理と臨床(臨時増刊号)12: 375-378, 1994.
Takeuchi K, et al: Lymphomatoid gastropathy: a distinct clinicopathologicentity of self-limited pseudomalignant NK-cell proliferation. Blood, 116: 5631-5637, 2010.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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