日本大百科全書(ニッポニカ) 「売り手責任制」の意味・わかりやすい解説
売り手責任制
うりてせきにんせい
商品を購入したのち、商品の欠陥などによって買い手に損害が発生した場合、売り手側が責任を負わなければならないとする消費者保護の基本的考え方の一つ。従来は、買い手に商品選択の自由がある以上、買い物の失敗の責任は買い手自身にあり、買い手が売り手側ないし商品の生産者の責任を立証しえない限り、失敗の損失は買い手に帰するという考え方にたっていた。これを買い手責任制という。しかし、商品の技術的高度化と多様化は、一般消費者を中心とする買い手側に責任を負わせることを困難にしただけでなく、悪質な売り手は、この点を利用して不当な商法をたくらむことにもなる。このような新しい事態に対応して消費者保護の立場から、従来とは逆の売り手責任制という考え方が生まれ、急速に広まった。消費者運動の高まりや社会的責任の強調が、このような売り手責任制への転換を推し進めた。こうした流れを受けて、1968年(昭和43)に消費者の利益を守る目的で消費者保護基本法(現消費者基本法)が制定された。なお、当初の基本法は消費者の保護を掲げたが、数次の改正を経た現在の基本法では、積極的に消費者の権利の尊重と自立支援を目的としている。また製造物責任(product liability, PL)について、1995年(平成7)に製造物責任法(PL法)が施行されている。
[森本三男]