日本大百科全書(ニッポニカ) 「夕立勘五郎」の意味・わかりやすい解説
夕立勘五郎
ゆうだちかんごろう
講談の主人公、またはその主人公の講談をさす。主人公の夕立勘五郎は「夕立」という暴れ馬を殴り殺したことにより、このようによばれるようになった。本名は伊賀屋勘五郎、江戸時代の天明(てんめい)(1781~89)のころ活躍した人物となっている。講談は、武蔵(むさし)国中目黒の百姓である勘五郎が学問と剣術を修業し、江戸に出て活躍し、江戸いちばんの元締(もとじめ)(大名や旗本の屋敷に出入りする町人の頭のこと)とうたわれるまでの話である。とりわけ剣術の腕が高く、仁義を重んじ、そのためには身を捨てても惜しまぬ勘五郎は、生涯のなかで知人の仇討(あだうち)を頼まれたのが二度、師匠の仇討が一度、計三度の仇討をし、誉れの高い侠客(きょうかく)として人気を博した。
[犬馬場紀子]