アメリカの作家F・S・フィッツジェラルドの長編小説。1934年刊(決定版1951)。アメリカ人の精神病医ディック・ダイバーは、スイスの療養所に入院中の富豪の娘ニコル・ワレンと恋に落ち、結婚する。南仏リビエラに家を構え、妻のために献身的に奉仕する。数年後、若い女優ローズマリーが彼を愛し、それがきっかけで、張り詰めていた彼の心のバランスが崩れる。妻をはじめ、すべての人を幸せにしようと奉仕生活を送る間に、彼の青春は失われていた。しだいに荒(すさ)んでいくディックとは対照的に、精神の健康を取り戻したニコルは新しい恋人をみつけ、彼と別れる。
この作品の執筆当時、作者自身の人生が崩壊に向かっていた。また時代的にも、アメリカ社会は1920年代の繁栄から1930年代の不況に転落していた。そのような「凋落(ちょうらく)」の悲しみが作品全体に滲(にじ)み出ている。滅びゆくものの美しさをたたえ、不思議な魅力をもつ作品である。
[渥美昭夫]
『谷口陸男訳『夜はやさし』全2冊(角川文庫)』
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