ニコル(読み)にこる(英語表記)John Ramsay Allardyce Nicoll

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニコル」の意味・わかりやすい解説

ニコル(Charles Jules Henri Nicolle)
にこる
Charles Jules Henri Nicolle
(1866―1936)

フランスの細菌学者。1928年ノーベル医学生理学賞受賞者(チフスの研究)。ルーアンの医学校を卒業後、パリのパスツール研究所長メチニコフとルーに師事。ルーアン医学校細菌学教授。1903年北アフリカ、チュニスのパスツール研究所長となり、以後32年間、発疹(はっしん)チフスその他の病原微生物との闘いに献身した。1909年、発疹チフス患者血液を接種して発疹したチンパンジーの血液を吸ったコロモジラミによって2匹のサルの発疹チフス発病に成功、ただちに追試、承認された。「シラミなくして発疹チフスなし」の定律はここから始まる。熱帯病猖獗(しょうけつ)中心地から離れず、あらゆる熱帯病病原を研究対象とした、他に類のない細菌学者である。また空想小説作家として著した『ベロンの菓子屋』その他の作品があり、『医学の責任』『感染症の運命』『自然と生物学的思想と倫理』など、医学哲学的著作も残した。

藤野恒三郎


ニコル(William Nicol)
にこる
William Nicol
(1768―1851)

イギリス物理学者スコットランドに生まれ、のちにエジンバラ大学物理学教授。電磁波理論で知られるJ・C・マクスウェルは彼の学生であった。1828年、アイスランド産の方解石プリズムを2個組み合わせ、直線偏光を取り出す方法を発明した。今日ニコルのプリズムの名でよばれている。

[辻内順平]


ニコル(John Ramsay Allardyce Nicoll)
にこる
John Ramsay Allardyce Nicoll
(1894―1976)

イギリスの演劇史家。グラスゴーに生まれる。ロンドン大学、アメリカのエール大学バーミンガム大学の教授を歴任。また、ストラトフォード・アポン・エイボンにシェークスピア研究所を創設する。上演史を専門とし、主著は六巻からなる『イギリス演劇史』A History of English Drama 1660―1900(1952~59)である。また、『シリル・ターナー作品集』Works of Cyril Tourneur(1930)や『チャプマン訳ホーマー』Chapman's Homer(1957)など、16、7世紀文学作品の校訂者でもある。

[小津次郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ニコル」の意味・わかりやすい解説

ニコル
Nicoll, Allardyce

[生]1894.6.28. グラスゴー
[没]1976.4.17. ロンドン
イギリスの歴史家,演劇学者,シェークスピア学者。ロンドン大学英文学教授 (1926~33) ,エール大学演劇学教授 (33~45) 。ストラトフォードオンエーボンのシェークスピア・インスティテュート会長として活躍しながらヨーロッパの演劇史,演劇論に関する多くの著書を発表。また年刊『シェークスピア・サーベイ』の編集者としても有名。代表的著書『イギリス演劇史 1660~1900』 History of English Drama1660-1900 (6巻,52~59) ,『スチュアート朝仮面劇とルネサンス舞台』 The Stuart Masques and the Renaissance Stage (39) ,『世界の演劇』 World Drama (49,改訂版 76) 。

ニコル
Nicolle, Charles-Jules-Henri

[生]1866.9.21. ルーアン
[没]1936.2.28. チュニス
フランスの細菌学者。ルーアンで医学教育を受け,1893年に学位取得。 1903年チュニスのパスツール研究所所長,32年にコレージュ・ド・フランスの教授になった。カラアザールの病原体の純粋培養に成功し,09年,発疹チフスがコロモジラミで媒介されることを発見し,第1次世界大戦中の発疹チフスの予防に大きな役目を果した。 28年この業績に対し,ノーベル生理学・医学賞が贈られた。

ニコル
Nicol, William

[生]1768
[没]1851.9.2. エディンバラ
イギリスの物理学者,鉱物学者。エディンバラ大学で自然哲学を講じた。結晶や鉱物を顕微鏡で観察する際,標本を非常に薄くする方法を開発した。 1828年,方解石の2片をカナダバルサムで張合せ,偏光線を取出す「ニコルのプリズム」を発明したことで知られている。

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