大地のうた(読み)だいちのうた(英語表記)Pather Panchali

日本大百科全書(ニッポニカ) 「大地のうた」の意味・わかりやすい解説

大地のうた
だいちのうた
Pather Panchali

インド映画。1955年発表、翌年のカンヌ国際映画祭で特別賞を受賞。66年(昭和41)日本公開。監督サタジット・ライ。ビフティブシャーン・バナールジの自伝小説を映画化したもので、ベンガル地方の農村に住む一家を描きながら、その生活の自然とのみごとな調和を映像詩によって物語った。旅に出て留守がちな父、口やかましいが働き者の母、すこしわがままな祖母、心優しい姉、そして少年オプーの一家の日常を映しながら、悠久の大地に生きるインドを感じさせる。ほとんどすべて素人(しろうと)を出演させ独創的な表現スタイルを編み出したライの演出は、アジア映画独自のものとして欧米から高く評価された。同じ原作からオプーの成長を追って映画化した『大河のうた』(1956)、『大樹のうた』(1959)とあわせて「オプー三部作」を構成する。

[登川直樹]

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デジタル大辞泉プラス 「大地のうた」の解説

大地のうた

1955年製作のインド映画。ベンガル地方の貧しい少年を主人公にした人間ドラマ。監督:サタジット・レイ。『大河のうた』(1956)、『大樹のうた』(1959)で三部作をなす。

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世界大百科事典(旧版)内の大地のうたの言及

【レイ】より

…〈映画を単なる娯楽としてでなく,芸術と認識したインド最初の世代〉を代表する監督であり,インド映画に初めて国際的な高い評価をもたらした。処女作《大地のうた》(1955)が1955年度カンヌ映画祭の〈ヒューマン・ドキュメント賞〉をはじめとする12の賞を獲得して以来,《大河のうた》(1956)の57年度ベネチア映画祭グラン・プリ,《大都会》(1963)の64年度ベルリン映画祭グラン・プリ等々,次々と国際映画祭の賞をさらい,インド映画最高の巨匠とみなされるに至り,また日本の黒沢明と並んでアジアの生んだもっとも偉大な映画作家ともみなされている。 サタジット・レイの功績は,それまで歌と踊りが必ず入る夢物語のようなものだったインド映画に,現実を見据える日常的なリアリズムとそれをささえる高い精神性を根づかせた点にあり,それは彼が1950年にロンドンに渡ったときに見た,ビットリオ・デシーカ監督の《自転車泥棒》(1948)をはじめとするイタリアの〈ネオレアリズモ〉の映画から学んだものだとみずから証言している。…

※「大地のうた」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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