日本大百科全書(ニッポニカ) 「大腸がん検診」の意味・わかりやすい解説
大腸がん検診
だいちょうがんけんしん
対象集団の大腸がんによる死亡率を下げることを目的として行われる検診。大腸がんの予防には、適度な体型の維持、食生活の改善、運動習慣、禁煙、節酒などの一次予防と、二次予防である大腸がん検診が重要な役割を担っている。日本における大腸がん検診としては、市区町村が実施する「対策型検診(組織型検診)」があげられる(がん検診は個人の健康リスクに対応する人間ドックなどの「任意型検診」とは区別される)。また、事業所や健康保険組合など職場での検診の精度管理(質の確保と手順の標準化)を行い、対策型検診として利用する取組みもなされている。
対策型検診は、対象集団全体の死亡率を下げることを目的とし、公共的な医療サービスとして実施される。検査費用に公的補助が適用されるため、無償あるいは安価な自己負担額で受診することができる。任意型検診は、人間ドックなどで提供される任意の医療サービスで、個人の健康リスクに対応することを目的としたものである。
厚生労働省は「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」を定め、対策型検診としての大腸がん検診の内容を示している。対策型検診としての大腸がん検診は、40歳以上の男女を対象に、1年に1回、問診および便潜血検査の形で実施される。問診では現在の症状、既往歴、家族歴および過去の検診の受診状況などが聴取される。便潜血検査は免疫便潜血検査2日法を行い、要精検となった場合は、精密検査として下部消化管内視鏡検査が行われる。
厚生労働省が実施している「国民生活基礎調査」によると、2016年(平成28)の大腸がん検診の受診率は男性44.5%、女性38.5%である。2013年と比べ男性3.1ポイント、女性4.0ポイントの上昇はみられるが、今後さらなる受診率の向上が望まれる。
[渡邊清高 2019年8月20日]