改訂新版 世界大百科事典 「大茘人」の意味・わかりやすい解説
大茘人 (ダーリーじん)
Dà lì rén
Dali man
中国陝西省大大茘県の段家村にある中期更新世の遺跡。1978年に段丘堆積中から頭骨化石が発見され,大茘人と呼ばれている。年代はウラン系列法で約20万年前と推定されているが,さらに新しいとの報告もある。脳頭蓋は,低く広く長く,頭蓋腔容積(脳容積より10%ほど大きい)も小さい(1120ml)点では原人のホモ・エレクトスと似ているが,全体に丸みがあり,乳様突起が大きい点は旧人のホモ・ハイデルベルゲンシスに近い。眼窩上隆起は左右とも強くアーチを描き,内側部が極めて厚い。顔面は非常に低く(短い),平坦で,鼻骨の隆起がない。眼窩の下縁が外側に向かって強く下がるので,飛行士眼鏡を想起するといわれる。大茘人の位置づけに関しては,中国の研究者の一部は,鄖県人とともに,北京原人から中国の新人への進化の途上にあると解釈しているが,多くの研究者はアフリカや西アジアのホモ・ハイデルベルゲンシスの子孫と見なしている。石器は,石英製の剥片や小さな石核が発見されている。
→北京原人 →ホモ・エレクトス →ホモ・ハイデルベルゲンシス
執筆者:馬場 悠男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報