天主実義(読み)てんしゅじつぎ(その他表記)Tiān zhǔ shí yì

改訂新版 世界大百科事典 「天主実義」の意味・わかりやすい解説

天主実義 (てんしゅじつぎ)
Tiān zhǔ shí yì

マテオリッチ(中国名は利瑪竇(りまとう))の主著イエズス会宣教師として中国に入ったマテオ・リッチがキリスト教布教のために中国語で著した教理問答書で,1603年(万暦31)に刊行された。基本的構成は先に刊行された《天主実録》を踏襲しながら,内容的には,中国人との直接問答集である《畸人十篇》をとり入れている。論述は中士の問いと西士の答えで展開し,キリスト教,西欧思想と中国の三教(儒,仏,道)思想との相違随所に示されている。日本では江戸期によく読まれた。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「天主実義」の意味・わかりやすい解説

天主実義
てんしゅじつぎ
Tian-zhu shi-yi

イエズス会のイタリア人宣教師マテオ・リッチ (中国名,利馬竇) の著書。万暦 32 (1604) 年刊。明末の中国の知識人のためにキリスト教教理を論じた書物で,上下2巻から成る。中国人学者の質問に西洋のキリスト教学者が答えるという体裁をとり,神による創造から論を起して,キリストによる救いに及んでいる。文章,内容とも中国で出版されたキリスト教書のうちで最もすぐれ,中国人に大きな感化を及ぼした。錘振之の『天学初徴』はこの書を論駁しようとしたものである。

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旺文社世界史事典 三訂版 「天主実義」の解説

天主実義
てんしゅじつぎ

イタリアのイエズス会宣教師マテオ=リッチのカトリック教義についての翻訳書
1603年刊。キリスト教を中国人に理解させるために書かれた問答集。

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世界大百科事典(旧版)内の天主実義の言及

【天主教】より

…彼は中国人のよき協力者を得て,22種に及ぶ自然科学書・宗教書を中国語に翻訳した。その中で中国人の地理感覚に衝撃を与えた《坤輿(こんよ)万国全図》,ユークリッド幾何学を紹介した《幾何原本》などの自然科学書は西欧,キリスト教文化の卓越性を強調して中国人の尊敬を得るための方便であるが,彼の主著は中国で刊行された伝道書の白眉ともいうべき《天主実義》である。これは中士と西士の問答体により,中西の学術思想,信仰体系の相違を際だたせてキリスト教信仰に導こうとするもので,ここで儒仏道三教が宗教として不全未熟であること,中国の社会慣習が天主教に背いていること,とくに中国人には絶対的救済者の観念が欠落しており,自力で自己救済しようと説くのは人間が神によってそのように創造されてはいないことを知らないからである,などと鋭く批判する。…

※「天主実義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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