日本大百科全書(ニッポニカ) 「天辻峠」の意味・わかりやすい解説
天辻峠
てんつじとうげ
奈良県西南部、五條(ごじょう)市西吉野町地区と同市大塔(おおとう)町地区の境界にある峠。吉野川水系の丹生(にゅう)川の支流永谷(えいたに)川と十津(とつ)川上流との分水界をなす。かつては五條と新宮(しんぐう)(和歌山県)を結ぶ西熊野街道最大の難所で、ここで口吉野と奥吉野に分けられた。峠南部の天ノ川辻(てんのかわつじ)(五條市大塔町天辻)は峠下集落で問屋や宿屋があって栄えた。1922年(大正11)峠から約50メートル下に天辻トンネルが開通し、1959年(昭和34)にはその下約100メートルに新天辻トンネル(1174メートル)が完成して国道168号が通じ、距離の短縮、勾配(こうばい)の緩和によって自動車交通が容易になった。なお、天辻峠には旧国鉄の計画線五新線のトンネルがつくられていたが、五新線計画は廃止となり、トンネルは現在では大阪大学物理研究センター大塔コスモ観測所となっている。
[菊地一郎]