十津川(読み)トツガワ

デジタル大辞泉 「十津川」の意味・読み・例文・類語

とつ‐がわ〔‐がは〕【十津川】

奈良県南部を流れる川。上流は山上ケ岳付近に源を発するてんノ川で、南流して和歌山県に入り熊野川となる。

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精選版 日本国語大辞典 「十津川」の意味・読み・例文・類語

とつ‐がわ‥がは【十津川】

  1. ( 「とつかわ」とも )
  2. [ 一 ] 奈良県南部を流れる川。大峰山脈山上ケ岳の南側に発し、曲流して和歌山県にはいり、北山川と合流して熊野川となる。猿谷ダム付近から上流は彌山川または天ノ川と呼ばれる。長さ約一一〇キロメートル。
  3. [ 二 ] 奈良県南端部の地名紀伊山地の十津川流域にある。上代から中世にかけて山岳武士の集団があり、近世には十津川郷士が成立した。
    1. [初出の実例]「吉野・とつかはの勢ども馳集て」(出典:平家物語(13C前)四)

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日本歴史地名大系 「十津川」の解説

十津川
とつかわ

山上さんじようヶ岳と弥山みせんの間に源を発し、上流はてんノ川とよばれる。曲流しながら西南に流れ、大塔おおとう村大字阪本さかもとで南流に転じ、十津川村に入って十津川となる。V字形の渓谷を作りながら村内を南下して和歌山県に入り、東牟婁郡熊野川町の宮井みやい北山きたやま川と合し熊野川となって新宮市熊野灘に注ぐ。県内延長一四一キロ。支流の主なものは左岸からふなノ川・あさひ川・たき川・芦廼瀬あしのせ川、右岸から中原なかばら(大塔村)川原樋かわらび川・神納かんの川・西にし川・上湯かみゆ川などが流入する。

河岸は一般にV字形の急斜面で、わずかながら所々に緩斜面があり、畑地や集落がある。曲流部では円滑斜面にあたる所に段丘が多く、川が下刻しつつしだいに屈曲を加えていったことを示す。


十津川
とつかわ

奈良県教育委員会事務局文化財保存課編 十津川村役場 昭和三六年刊

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「十津川」の意味・わかりやすい解説

十津川(村)
とつかわ

奈良県南部、吉野郡の村。村では日本最大の面積(672.38平方キロメートル、北方領土を除く)をもつ。紀伊山地中央部を嵌入蛇行(かんにゅうだこう)する十津川(とつがわ)の流域で、沿岸の緩斜面上に畑地と集落が点在する。村域のほとんどが山林で、林業を主産業とし、シイタケ、イエシメジ、ワサビ、薬草の栽培やアメノウオアマゴ)の淡水養殖なども行われる。吉野熊野総合開発事業により風屋(かぜや)、二津野(ふたつの)の2ダムがつくられ、国道168号の開通などもあって、かつての秘境も近代化された。国道169号、425号も通じている。1978年(昭和53)には旭(あさひ)ダムの揚水式奥吉野発電所が始動した。十津川に架かる谷瀬(たにせ)の吊橋(つりばし)、原始的な乗り物「野猿(やえん)」、上湯(かみゆ)、湯泉地(とうせんじ)、十津川の各温泉、玉置山(たまきやま)山頂の眺望と付近の玉置神社など観光資源に恵まれ、観光地化が進んでいる。神武(じんむ)東征にまつわる伝説や南北朝時代の南朝遺跡も多く、幕末の天誅(てんちゅう)組の変に参加した十津川郷士(ごうし)の活躍も有名。武蔵(むさし)、小原(おはら)、長井地区に伝わる風流踊(ふりゅうおどり)の一種「十津川の大踊」は国指定重要無形民俗文化財・ユネスコ(国連教育科学文化機関)無形文化遺産。また、2004年(平成16)に大峰奥駈道(おおみねおくがけみち)や熊野小辺路(こへち)が「紀伊山地の霊場と参詣(さんけい)道」として世界遺産(文化遺産)に登録されている。なお、1889年(明治22)十津川が氾濫(はんらん)して大被害をもたらし、当時の村民の約半数、600戸、約2500人が北海道に移住し新十津川村(現、空知(そらち)総合振興局管内の新十津川町)を開いた。中心地区の小原には歴史民俗資料館がある。人口3061(2020)。

[菊地一郎]

『酒田正俊著『十津川郷』(1954・十津川村史編輯所)』



十津川
とつがわ

奈良県南部を流れる川。上流は大峰(おおみね)山脈の山上(さんじょう)ヶ岳付近に源を発する天ノ川(てんのかわ)で、西流して五條(ごじょう)市大塔(おおとう)町地区に入って流路を南に転じ、猿谷(さるたに)ダムを経て同町辻堂(つじどう)で十津川となる。大峰山脈と伯母子(おばこ)山地との間を嵌入蛇行(かんにゅうだこう)してV字谷をつくり、舟(ふな)ノ川、川原樋(かわらひ)川、旭(あさひ)川、神納(かんの)川などをあわせ、十津川(とつかわ)村を南流して和歌山県に入り熊野川となり、新宮(しんぐう)市で熊野灘(なだ)に注ぐ。延長約114キロメートル。沿岸の所々に緩傾斜地が開け、畑地と集落が点在する。第二次世界大戦後、電源開発事業によって猿谷、風屋(かざや)、二津野(ふたつの)の3ダムがつくられた。川沿いに通ずる西熊野街道は、五條市と新宮市を結ぶ国道168号となった。

[菊地一郎]

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改訂新版 世界大百科事典 「十津川」の意味・わかりやすい解説

十津川[村] (とつかわ)

奈良県吉野郡の村。奈良県の最南端に位置し,面積は672.4km2で県下の市町村中最大。人口4107(2010)。東の大峰山脈,西の伯母子(おばこ)山脈にはさまれ,ほぼ中央を十津川が深い渓谷をなして南流,平地に乏しい。一帯は古くから天皇家とかかわりが深く,南北朝期には吉野朝の軍事・経済上の後背基地の一部であった。住民は急峻な斜面に焼畑をつくり,ヒエ,アワ,サトイモ,ダイコンなどを栽培して自給生活をいとなみ,かたわら狩りや山仕事に従ってきた。近世には幕府直轄地として五条代官所の管下にあり,年貢を免除される代りに材木運上の夫役を務めた。十津川郷士は南朝の遺臣と伝え,幕末の天誅組の挙兵には多数の郷士がかかわった。1871年(明治4)全戸が士族に列し,また廃仏毀釈により大峰修験の行場であった玉置(たまき)山(別当,高牟婁院)を玉置神社とし,全村の寺を廃している。89年8月,十津川の水害により大被害をうけ,数百戸が北海道に移住,新十津川村(現,空知支庁新十津川町)をつくった。以後,過疎化が進んでいるが,ダム建設などによる開発も進み,十津川沿いの西熊野街道は国道168号線として改修され,奈良・大阪方面や新宮市とも結ばれる。林業を主産業とするが,観光資源にもめぐまれ,村内には南朝ゆかりの遺跡が伝えられる。小原にある十津川宝蔵(ほうぞう)には後村上天皇綸旨(りんじ)をはじめ年貢赦免状や天誅組関係文書など多くの記録や文書が収蔵されている。十津川に臨む武蔵(むさし)に湯泉地(とうせんじ)温泉,平谷には二津野ダムによってできた湖のほとりに十津川温泉がある。
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十津川 (とつかわ)

奈良県南部,紀伊山地の山上ヶ岳(1719m)に源を発し,曲流しつつ五条市の旧大塔(おおとう)村,十津川村をほぼ南流し,和歌山県新宮市と三重県熊野市との境付近で北山川と合流して熊野川となり,熊野灘に注ぐ。長さ約110km。上流部は天(てん)ノ川とも呼ばれる。旧大塔村,十津川村では穿入(せんにゆう)蛇行して深いV字谷を刻んでいるが,両岸の河岸段丘上に狭小な耕地と集落が立地する。1889年8月の大水害によって河床が上昇し,現在では広い河原がみられる。流域はかつて秘境といわれたが,川沿いに国道168号線が通じて五条市と和歌山県新宮市を結び,猿谷,二津野(ふたつの)などのダムが建設されて森林開発と水力電源開発が大規模に進行した。これにともなって水運を利用していた木材輸送も陸送に変わった。十津川村平谷には,二津野ダムによって出現した十津川湖の湖畔に十津川温泉がある。
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百科事典マイペディア 「十津川」の意味・わかりやすい解説

十津川[村]【とつかわ】

奈良県南部,吉野郡の村。十津川流域を占める本州最大の村で,耕地は少なく山腹に散在する農家は林業を主とする。南北朝期には吉野朝の軍事・経済上の後背基地で,近世には五条代官所の管下にあった。南朝の遺臣と伝えられる十津川郷士は幕末,天誅(てんちゅう)組に参加,十津川の変を起こした。長い間隔絶村であったが,国道168号線が通じ,吉野熊野特定地域総合開発による林業資源・電源開発が進んでいる。2004年紀伊山地の霊場と参詣道が世界遺産条約の文化遺産リストに登録された(大峯奥駈道,玉置神社)。672.38km2。4107人(2010)。
→関連項目奥吉野[発電所]

十津川【とつかわ】

奈良県南部の川。紀伊山脈の山上ヶ岳に発し,横谷をなして南流,和歌山県に入り北山川と合して熊野川となる。十津川村など流域は平地に乏しく,人口も少ないが,林産資源が豊富。電源開発も進んでいる。
→関連項目紀伊山地奈良[県]本宮[町]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「十津川」の意味・わかりやすい解説

十津川
とつかわ

奈良県南部の川。熊野川の上流。大峰山脈の山上ヶ岳に源を発する天ノ川を上流とし,吉野山地を穿入蛇行しながらほぼ南流,和歌山県に入って熊野川となる。第2次世界大戦後,吉野熊野総合開発計画の一環として,猿谷,風屋,二津野の各ダムが完成,猿谷ダムの水を紀ノ川に分流する流域変更も行われた。河谷に沿って奈良県五條市と和歌山県新宮市を結ぶ国道 168号線が開通,かつての筏流しによる木材流送は,トラック輸送に代った。国道開通まで流域は隔絶された山村であったため,独特の言語風俗が残っている。流域に湯泉地 (とうせんじ) ,十津川などの温泉がある。

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事典・日本の観光資源 「十津川」の解説

十津川

(奈良県吉野郡十津川村)
関西自然に親しむ風景100選」指定の観光名所。

出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報

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