道路法(昭和27年法律第180号)上の道路のうち、全国的な道路網に占める役割から国がその建設・運営に何らかの形で関与するとして国土交通大臣が指定するもので、高速自動車国道と一般国道とからなる。一般国道は全国的な幹線道路網を構成し、しかも政治上・経済上・文化上重要な都市を結ぶ路線などが、また高速自動車国道はそのなかでも国の利害にとくに重大な関係を有するものが、それぞれ指定される。とはいえ、すべての路線・区間につき管理を国が自らの負担で行うわけではない。ここでいう管理とは道路法上の用語で、新設・改築と維持・修繕その他管理を総称する(以下同様)。
[伊勢田穆]
一般国道は、直轄国道(指定区間)と補助国道(指定区間外)からなる。これは、第二次世界大戦前の旧道路法に、例外的に国が自らの負担で新設・改築を行うもの(東京市と神宮・府県庁ならびに師団軍司令部の所在地などとを結ぶ路線など)のほかは、すべて国の機関としての府県(知事)が管理し、その費用は国が補助金をつけるにしても府県の負担とするという原則があって、この原則が戦後の(都道府県が国の機関ではなくなった時代の)新道路法にも継承されたことによる。前者が後に直轄国道、後者が補助国道となった。一般国道総延長に占める割合も補助国道の方が大きい(2011年4月の時点で、総延長6万7297.5キロメートル中の3万9606.4キロメートル)。国道でありながら都道府県が自らの負担で管理する補助国道の存在を根拠づけるのは、その主たる受益者は沿線住民であるとする認識であるが、それは国道の要件(全国的な幹線道路網を構成し、しかも重要な都市を結ぶ路線)とも、またその利用の実態(同一都道府県内に起点と終点をもたない通過交通の割合はけっして低くはない)とも合致しない。そこで、道路法の数次にわたる改正によって、管理と費用負担の面で国の関与を強める方向で是正がなされ、新設・改築については直轄国道・補助国道とも国の責任となったが、補助国道の維持・修繕・その他管理の責任は依然として都道府県(または政令指定市。以下同様)にあるばかりでなく、費用負担の面では直轄国道であっても新設・改築では3分の1を、維持・修繕でも10分の4.5を、補助国道であれば新設・改築でも2分の1を、維持・修繕では全額を都道府県が分担する。直轄国道といっていながら新設・改築と維持・修繕の両面で都道府県に多額の負担を強いることに、各方面からの批判は根強い。
一般国道には一般国道自動車専用道路という名の、本州四国連絡道路を含む、高速自動車国道とは別の自動車専用道路が存在する。その多くは通行料を課さない直轄国道として管理されるが、一部(本州四国連絡道路を含む)は国にかわって高速道路会社が一般有料道路として経営する。一般有料道路は、後述の高速自動車国道とは違ってプール制は適用されないので、個別に収支を計り、債務の償還が完了した時点で無料開放される。ただ、通行量に多くを見込めない路線は、個別採算制では料金は利用者の負担力を超えることになり、それが通行量をさらに減少させるという悪循環に陥る。そこで、その種の路線には合併施工方式という名の新方式が適用されることとなった。用地の取得と工事の一部を国の負担で行い、料金の対象となる会社の負担を残りの工事とその後の管理に限るわけである。この方式は高速自動車国道にも導入されようとしている。
[伊勢田穆]
高速自動車国道は、道路法の1957年(昭和32)改正によって国道に加えられた自動車による高速交通の用に供する道路であって、高速自動車国道法(昭和32年法律第79号)に基づき、国土開発幹線自動車道に若干の国土交通大臣の定める路線を加えた予定路線のうちから、国土開発幹線自動車道建設会議の議を経て国土交通大臣が決定する基本計画・整備計画に基づき順次整備される(国土開発幹線自動車道と国土開発幹線自動車道建設会議については「高規格幹線道路」の章を参照)。この種の道路は、道路関係四公団の民営化後は高速道路会社が、新設路線は日本高速道路保有・債務返済機構との協定に基づき新設・改築および維持・修繕・災害復旧・その他管理を、既設路線は機構から借り受けて維持・修繕・災害復旧・その他管理を、いずれも有料道路方式で実施することになっている。しかし、整備計画の決定された路線・区間には採算の見通しの厳しさから会社が事業化を引き受けないと予想されるものもあり、当時の政府・与党はそうした路線・区間であっても整備を可能にすべく、民営化立法の法案化の協議のなかで「新直轄方式」と名づける整備方式を導入することとし、高速自動車国道法を改正して制度化した。
新直轄方式とは、国が関係する地方当局の負担を得て整備し(地方の負担割合は新設・改築と維持・修繕とも4分の1。ただしその負担分は実際には自動車重量税の配分によって補填(ほてん)される)、高速自動車国道でありながら無料で利用に供するものをいう。整備計画の決定した予定路線のうちで新直轄方式の適用される区間は、高速自動車国道予定路線9428キロメートル中の865キロメートルであるが(2011年3月31日現在)、この方式の適用は国会議員の発言力の強い建設会議の議を経る定めになっているので、今後さらに増えると予想される。
[伊勢田穆]
高規格幹線道路とは、自動車による高速交通に対応するための、全国的幹線交通網のなかに位置づけられた自動車専用道路をいう。高速自動車国道と、一般国道の自動車専用道路の二つからなる。
高規格幹線道路の母体は、国土開発縦貫自動車道建設法(1957)とその後の個別の建設立法(いずれも議員立法)によって国に予定路線を明示して建設の推進を命じた国土開発縦貫自動車道にある。これを国は、若干の新たな予定路線を加えて高速自動車国道法(1957)をもって引き継ぎ、道路法上の道路として建設・管理した。その後政府は、その整備は個別の路線ごとにではなく国土全体を見通した有機的・一体的な高速道路網として推進すべきだとして、それまでの議員立法を廃止して国土開発幹線自動車道建設法(1966)の立法化を図り、名称も国土開発幹線自動車道に改めた。一部を除き国土開発幹線自動車道法と高速自動車国道法との二重の籍を有するこれらの道路は、前者の立法の趣旨から、後者の法律で追加された路線も含めて、基本計画と整備計画は国土開発幹線自動車道建設会議(国会議員が委員の半数を占める)の議を経なければならないことになっている。
縦貫自動車道にせよ幹線自動車道にせよ、いずれも国土開発という語を冠することからもわかるように、その意義を交通というよりは国土開発・地域開発に置いていた。そうした経緯もあって、第四次全国総合開発計画(1987)が高速自動車国道に一般国道中の自動車専用道路のうちから国土交通大臣の指定する路線(後者には建設会議は関与しない)を加えたものを高規格幹線道路網と命名し、国土の骨格となる基幹的な高速陸上交通網を形成するものとして位置づけた。「四全総」の掲げる高規格幹線道路網構想は、全体で約1万4000キロメートル、うち高速自動車国道は1万1520キロメートル、一般国道自動車専用道路は約2480キロメートル(本州四国連絡橋180キロメートルを含む)からなるネットワークを計画し、四全総の後継の「21世紀の国土のグランドデザイン」(1998)にもそのまま引き継がれた。このうち高速自動車国道は8663キロメートル、一般国道自動車専用道路も1206キロメートルがすでに供用済である(2011年9月1日現在)。
[伊勢田穆]
道路のうち国の営造物であるものをいう。日本では〈道路法〉の規定により,高速自動車国道と一般国道の2種類がある。
(1)高速自動車国道 自動車の高速交通の用に供する道路で,全国的な自動車交通網の枢要部を構成し,かつ政治,経済,文化上とくに重要な地域を連絡するもの,その他国の利害に重大な関係を有するもので,政令によって路線が指定される(例,中央自動車道)。現在,21世紀初頭を目途とする7600kmの建設計画に対し,実延長約7392km(2006年4月)が供用されている。高速自動車国道は沿道からの人や車の出入りを完全に制限した自動車専用道路で,他の道路とはすべて立体交差し,主要な道路とはインターチェンジによって接続する。また自動車の高速かつ円滑な走行を確保するため,線形,幅員等の道路構造に高い規格が適用され,通行方法も〈道路交通法〉において最高速度(バスおよび普通自動車100km/h),最低速度(50km/h),横断,転回,後退の禁止等,一般の道路とは別途の規定がなされている。なお高速自動車国道は国(建設大臣)が建設および管理を行うものであるが,実際は日本道路公団がその権限を代行しており,料金収入によって建設費および維持管理費が償還されしだい,無料開放されることとなっている。
→高速道路
(2)一般国道 高速自動車国道とあわせて全国的な幹線道路網を構成し,かつ都道府県庁所在地その他重要都市を連絡する等の一定の要件を備えたもので,政令によって路線が指定される。路線名は指定順に国道番号(例,一般国道1号)により表示される。一般国道の新設,または改築は原則として建設大臣が行うものとされ,維持,修繕その他の管理については,政令で指定する区間を建設大臣が行い,その他の区間は都道府県知事(または指定市の長)が行うものとされている。なお,一部,日本道路公団等が有料道路として建設および管理を行っている区間がある。現在459路線,実延長約5万4347km(2006年4月)が指定されている。
執筆者:会田 正
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【日本の道路】
[発達略史]
馬車交通の発展しなかった日本では,明治初期に徒歩の時代から鉄道の時代へと突入し,政府は鉄道中心の陸上交通政策をとった。自動車保有台数が20万台となった1938年にも舗装率は国道16%,府県道2.6%という状態であった。第2次大戦後の復興も交通面では再び鉄道中心で始められたが,産業構造の変化や工業の内陸への立地にともなってトラック輸送の重要性が増し,自動車保有台数の増加と相まって,道路整備への要求が高まった。…
※「国道」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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