天降(読み)あもる

精選版 日本国語大辞典「天降」の解説

あも・る【天降】

〘自ラ上二〙 (「天(あま)(お)る」の変化したもの)
① 天上から地上に降下する。あまくだる。
※万葉(8C後)一九・四二五四「天雲に 磐船浮かべ 艫(とも)に舳(へ)に 真かいしじ貫き いこぎつつ 国見しせして 安母里(アモリ)まし」
② 天皇がおでましになる。行幸する。
※万葉(8C後)二・一九九「高麗剣(こまつるぎ) 和蹔 行宮(かりみや)に 安母理(アモリ)いまして」
[語誌](1)用例が連用形に限られているので、活用の種類を四段と説くものもあるが、「天(あま)+降(お)る」の変化と見られ、「降る」の活用から上二段とする。
(2)類義語「あまくだる」があるが、クダルは上から下へ一気に直線的に移動する意であるのに対し、オルは注意を払いながら下がる意であるといわれる。
(3)「あもる」は用例が上代に限られているが、沖縄方言に、天女が天から下ることを意味するアマウリ・アマリ・アモリなどの語が残っている。雷が落ちる意のアマルも関連があるか。

あま‐くだ・す【天降】

〘他サ四〙 天上界から地上界に下しつかわせる。
※書紀(720)神代下(丹鶴本訓)「稜威(いつ)の道別(ちわ)き道別きて日向の襲(そ)の高千穂の峰(たけ)に天降(アマクダシ)たまふ」

あま‐くだり【天降】

〘名〙
① 天上界から地上界に降りること。また、その人。
※源平盛衰記(14C前)三「院の御気色に依りて若き殿上人〈略〉あまくたりあまくたりと拍(はや)す。是は尼の生たる子と云心をはやす也」
② 上役から下役へ、あるいは、官庁から民間への強制的なおしつけ、命令。また、そのようにして任命された人。〔通人語辞典(1922)〕
※大阪の宿(1925‐26)〈水上滝太郎〉一〇「此の天降(アマクダ)りがおとなしく従来のしきたりを踏襲して行かない」
③ 官僚がそれまでの仕事と関連のある民間の会社、または団体などの高い地位に再就職すること。
※溜飲を下ぐ(1935)〈丸山幹治〉内藤湖南博士「天下(アマクダ)りは役人の役徳となる」

あま‐くだ・る【天降】

〘自ラ五(四)〙
① 天上界から地上界に降下する。
※万葉(8C後)一八・四〇九四「葦原の 瑞穂の国を 安麻久太利(アマクダリ) 知らしめしける 天皇(すめろき)の 神の命(みこと)の」
※倭姫命世記(1270‐85頃)「天祖の降跡(アマクダリ)まして自り以逮(このかた)
② 天降り人事によって就任する。
※社会百面相(1902)〈内田魯庵〉青年実業家「濡手で粟の御用商人か、役人の古手の天下(アマクダ)ったのか」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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