太子伝(読み)たいしでん

百科事典マイペディア 「太子伝」の意味・わかりやすい解説

太子伝【たいしでん】

聖徳太子伝記太子に対する畏敬(いけい)の念は,平安時代以降多種の伝記の作成をうながした。四天王寺の障子絵に描かれたという,いわゆる《障子伝》は断片が諸書に引用される。現存するものでは,短編だが8世紀末から9世紀初に思託の《上宮皇太子菩薩伝》があり,記紀以前の史料を含む《上宮聖徳法王帝説》は平安初期に現在の形に整えられたと考えられる。1122年の奥書を持つ《上宮聖徳太子伝補闕記》では奇瑞が強調され,《聖徳太子伝暦》はそれまでの太子伝を集成した。鎌倉時代には,聖徳太子信仰の新たな高まりが見られ,1227年の奥書のある四天王寺の《太子伝古今目録抄》やそれに対抗した法隆寺顕真の《聖徳太子伝私記》が書かれた。鎌倉末の《正法輪蔵》まで,秘事口伝の度合を深め,また唱導絵解きの世界へと連なっていく。
→関連項目本朝法華験記

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