精選版 日本国語大辞典 「野菜」の意味・読み・例文・類語
や‐さい【野菜】
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副食物として栽培・利用される、主として草本性植物をいう。食料として一般に青物(あおもの)、また菜(さい)とよばれるものは、古くは圃菜(ほさい)、山菜(さんさい)、野菜、水菜(すいさい)と生育する場所により区別されていた。しかし、しだいに栽培されるものと野生のものとに分けて、前者を公式的表現、たとえば官公庁用語などでは蔬菜(そさい)、民間では一般に野菜とよぶようになり、後者を山菜というようになった。最近では官公庁用語でも蔬菜の名称を廃して野菜というようになり、農林水産省などの蔬菜試験場も茶業試験場と統合、野菜・茶業試験場と改称され、さらに2001年(平成13)独立行政法人農業技術研究機構(農研機構)所轄の野菜茶業研究所となった。
[星川清親 2021年2月17日]
2016年には農研機構の野菜花き研究部門と果樹茶業研究部門になった。
[編集部 2021年2月17日]
野菜は、世界の民族によって、その食生活の形、とくに主食の違いによって種類がかなり異なっている。しかし世界の文化の共通化が進むにつれて、食生活もしだいに特性を少なくし、野菜の種類も世界共通のものが多くなってきている。たとえばキャベツ、レタス、トマト、キュウリ、タマネギ、ニンジン、ジャガイモなどは、いまやほとんど世界中の民族にとって主要野菜となっている。しかし一方で民族によってきわめて固有な野菜もまだ少なくない。たとえば日本のクワイ、ハス、タケノコ、ウドなどはヨーロッパ諸民族は野菜として食べない。中国の料理にもマコモ、オオクログワイ、キンサイなど、中国人だけが好む野菜が数多くある。
[星川清親 2021年2月17日]
野菜の種類は世界全体で200~300あるが、きわめて局地的に利用されるものや特殊なものを除くとそれほど多くはない。日本では1年を通じて約150種の野菜が食べられている。これは、ヨーロッパでもっとも野菜の種類の多いフランスの約100種、ドイツの約80種、さらにアメリカの約95種に比べると、飛び抜けて多い。日本では日本固有の野生植物から野菜化されたものは、フキ、ミョウガ、ウド、ワサビなど、わずかの種類しかないが、農業が始まった弥生(やよい)時代以来、中国大陸や東南アジア各地から、野菜をいろいろ導入して種類を増やした。これらがいわゆる和食の野菜である。またさらに江戸時代、とくに明治時代にヨーロッパの野菜類を積極的に導入した。それらが西洋野菜または洋菜類とよばれるものである。日本列島は南北に長く連なり、地理的および季節的に気候の変異が大きいので、世界各地の野菜が栽培できること、また日本人が和食、洋食、中華食と食生活に開放的であるためにさまざまな野菜が利用されることなどが、日本が世界一の野菜の種類をもつに至った原因であろう。最近は山菜やキノコ類の栽培化が進み、野菜の種類はさらに増加の傾向にある。日本では主食の米食にあったおかずとして、ダイコン、ハクサイ、ネギなどの生産・消費が多いが、食の洋風化が進むにつれ、レタス、ピーマン、トマト、タマネギなど洋菜類の消費が伸び、伝統的な和風の野菜の消費は減る傾向にある。
[星川清親 2021年2月17日]
野菜は利用する植物体の部分によって次のように分類されている。
(1)果菜類 果実を用いるもので、キュウリ、カボチャ、スイカ、メロンなどウリ科作物と、ナス、トマトなどナス科作物が多い。マメ科もインゲンマメ、エンドウ、ソラマメ、ダイズ(枝豆)など種類が多い。ほかにオクラ、イチゴなど。
(2)根菜類 根を利用するダイコン、カブ、ニンジン、サツマイモ、ゴボウ、パースニップなど。また地下部の塊茎を用いるクワイ、サトイモ、ジャガイモや地下茎のハス(蓮根(れんこん))のほか、地中で葉が肥大したり変形したタマネギ、ラッキョウ、ユリ、ネギなど(以上4種は鱗茎(りんけい))がある。
(3)葉菜(ようさい)類 葉を食べるものにはキャベツ、ハクサイ、コマツナ、タイサイ、カラシナなどアブラナ科類が多い。ミツバ、セロリ、パセリなどセリ科、レタス、フキ、シュンギクなどキク科のものもいろいろある。ほかにホウレンソウ、フダンソウやツルナ、ツルムラサキなど種類が多い。
(4)花(か)・茎菜(けいさい)類 花を食べる野菜にはカリフラワー、ブロッコリー、アーティチョーク、ショクヨウギクなどがある。茎を食べるものにはウド、アスパラガス、タケノコなど、また茎が肥大したコールラビーなどがある。
(5)香辛料野菜その他 香辛料のなかでいわゆるハーブ(香草)としてはイノンド(ディル)、チャービルなど多くのセリ科植物、さらにウォータークレス(クレソン)、セージ、マヨラナ(マジョラム)、バジルなどきわめて多くのものがある。スパイスをとる野菜としてはトウガラシ(果実)、ショウガ、ワサビダイコン(セイヨウワサビ、塊茎)、ニンニク(鱗茎)などがある。日本的な香辛料野菜にはタデ、ハマボウフウ、シソ、サンショウ、ミョウガ、ワサビなどがある。
なお、豆類の多くは完熟したものは穀物として扱い、未熟のものは野菜として扱う。トウモロコシなども未熟果用は野菜に分類される。
[星川清親 2021年2月17日]
野菜は、デンプンを主とする穀物、あるいは肉食の副食物として、栄養的にはビタミンやミネラルを補給し、酸性に傾く肉・穀食をアルカリ性で中和する効果がある。また野菜に含まれる繊維質は消化・吸収を助長し、便通をよくするなど健康上に重要な働きをする。野菜のなかには、昔は薬草とされていたものも多く、この点でも保健上の効果が大きい。野菜は生鮮食料として用いられてきたが、現在では乾燥野菜や冷凍、缶詰など加工技術の発達により保存性が増し、また栽培技術の進歩により季節的な性格が失われて、周年供給されるものが多くなった。
[星川清親 2021年2月17日]
『熊沢三郎著『蔬菜園芸各論』(1967・養賢堂)』▽『高島四郎他著『原色日本野菜図鑑』(1964・保育社)』▽『青葉高著『ものと人間の文化史43 野菜――在来品種の系譜』(1981・法政大学出版局)』
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…そのほか,木本性で,デンプン性の果実をつけるパンノキや幹からデンプンをとるサゴヤシなども,熱帯地方ではエネルギー源となる食用作物として重視されている。 食用とする園芸作物は,大きく野菜類と果物類とに分けられる。園芸作物には,集約的な栽培を必要とするものが多く,穀物にくらべると貯蔵および運搬性が悪い。…
※「野菜」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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