精選版 日本国語大辞典 「大根」の意味・読み・例文・類語
だい‐こん【大根】
[1] 〘名〙
[一] (「おおね」に当てた漢字を音読したもの)
① アブラナ科の一年草または二年草。中央アジア原産とみられ、重要な蔬菜として古くから広く栽培されている。高さ約一メートル。地下に多汁・多肉質で長大な白い根がある。葉は群がって生え、とげ状の細毛がある。葉身は羽状に分裂、各裂片は卵状楕円形で縁はあらい歯牙(しが)状。春、葉間から花茎がのび、淡紫白色の十字形花が群がって咲く。花後、翼のある長さ四~六センチメートルの長形の果実を結び、中に黒褐色で扁平な球状の種子ができる。根は煮て、または生で食べるほか、切り干し・漬け物などにし、葉も食べられる。漢名、莱菔、蘿蔔(らふく)。すずしろ。おおね。だいこ。《季・冬》
※東寺百合文書‐を・応永二六年(1419)七月二日・食器食物等料足注文「十文 大こん」
※俳諧・陸奥鵆(1697)「菊の後大根の外更になし〈芭蕉〉」
※火の柱(1904)〈木下尚江〉九「銭取り道具と大目に見て居りゃ、菊三郎なんて大根に逆(のぼ)せ上って」
③ 紋所の一つ。大根をかたどったもの。違い大根、割り大根などがある。

④ 大根のように太くて、ぶかっこうなすねや足。特に女性の足をさしていい、転じて、女性をいう。
※雑俳・卯の花かつら(1711)「大根の構男にかこはれて」
⑤ 「だいこんじめ(大根注連)」の略。
⑥ 男根の大きなもの。
※壒嚢鈔(1445‐46)一四「仍天下に勅を下して、大根(だいコン)の者を求め給。押勝其仁に当と云共、道鏡猶を能く是に叶へり」
※兵範記‐保元元年(1156)六月四日「伴聖人、近代無双行者、心性大根権者」
[2] =だいこんばたけ(大根畑)(二)
※雑俳・柳多留‐三七(1807)「こひぞつもりて大根が五十本」
おお‐ね おほ‥【大根】
〘名〙
② 太い矢の根。
※浄瑠璃・大磯虎稚物語(1694頃)一「大ねの雁股口よりくはっと吹きかくる」
③ 物事のおおもと。根本。本質。副詞的に用いられることもある。
※足利本論語抄(16C)八「曾子には大根本体の処を示すぞ」
④ 建築で、二段になった枘(ほぞ)の、つけ根のほうの幅広になった部分。
だい‐こ【大根】
〘名〙 (「だいこん(大根)」の変化した語)
① =だいこん(大根)(一)(一)①《季・冬》
※咄本・醒睡笑(1628)四「京の町を大根売の、だいこかう大こかうというて通りける朝」
② 「だいこんやくしゃ(大根役者)」をいう。
※滑稽本・東海道中膝栗毛(1802‐09)七「『イヨ大根(ダイコ)ウ。十把(じっぱ)ひとからげじゃ』『ナニ大根とは、アノ役者のことか』〈略〉〈此大根といふ事は、上方にては役者の下手なものを大根といふ〉」
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