学校に下賜された「御真影(ごしんえい)」や教育勅語など勅語類を安置する建物。天皇・皇后の写真である「御真影」と勅語の諸学校への下賜は1890年(明治23)に始まるが、その下賜数がしだいに増加するとともにその管理規定も厳重となり、管理の不行き届きは学校長などの重大な責任問題とされるに至った。「御真影」などは当初校舎内の奉安所に安置されていたが、学校の火事に際して「御真影」を守って焼死する校長などが相次ぐなかで、校舎から離れた地点に堅固な奉安殿を建設し、「御真影」などを安置することが大正期から始まった。奉安殿の建設は1935年(昭和10)以降全国的に実施され、「御真影」はますます神格視された。敗戦後、「御真影」は焼却され奉安殿は取り壊された。
[赤澤史朗]
『山本信良・今野敏彦著『大正・昭和教育の天皇制イデオロギーI』(1976・新泉社)』
…校長にとっては,この儀式で勅語を正確に,しかも独特の抑揚をつけて奉読すること,火災から勅語謄本や御真影を守ることが最重要の任務とされた。さらに,これらを不敬のないよう保管するために奉安殿,奉安庫を校内に設置するよう同年11月訓令が出された。発布の翌年,勅語謄本への拝礼を拒否した第一高等中学校(後の第一高等学校)講師内村鑑三はその職を追われるという事件(内村鑑三不敬事件)があり,為政者はこうした事件を利用しながら,勅語を神聖化し,その国民への浸透をはかったが,その普及に最大の役割を負わされたのは小学校であり,祝祭日儀式を頂点としながら,修身,国語,歴史,唱歌など各教科で日常的に教育勅語の精神を徹底させる指導が行われた。…
※「奉安殿」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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