改訂新版 世界大百科事典 「風俗画報」の意味・わかりやすい解説
風俗画報 (ふうぞくがほう)
明治・大正期の風俗雑誌。東陽堂発行。1889年2月創刊,1916年3月廃刊。通巻478号。号数外の増刊を含む総冊数は517冊。西欧のグラフ雑誌の影響を受け,はじめ主として石版画,のちに写真版が挿入された四六倍判の雑誌で,日本で初めて誌名に〈画報〉の文字が使われた。創刊号は28ページ,定価10銭。〈画ヲ以テ一ノ私史ヲ編纂スルノ料ヲ作ル〉ことを目的に,江戸時代風俗の考証,各地に伝わる地方風俗の紹介,刊行時における流行風俗の記録を編集方針としたが,創刊当初は復古調の時流を反映して,江戸研究に重点が置かれている。初期の執筆者は野口勝一,渡部(大橋)乙羽,山下重民ら,画家は松本楓湖,寺崎広業ら。特集号として,1890年4月の《第三回内国勧業博覧会》から1914年12月の《欧州戦乱号》まで,博覧会,祝典,災害,戦争などをテーマに,増刊64種が刊行された。96年から14年間にわたって続刊された《新撰東京名所図会》64冊,《東京近郊名所図会》17冊は増刊中の圧巻で,挿絵は山本松谷(昇雲)が担当している。異色は《消防図会》《足尾銅山図会》《郵船図会》など,戦争特集では《日清戦争図絵》が石版画だけだったのに対して,10年後の《征露図会》には記録写真が登場した。大正時代には写真版が多数を占めるようになった。《風俗画報》の廃刊は,石版グラフィック時代にピリオドを打つものであった。
執筆者:槌田 満文
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報