子じま寺(読み)こじまでら

日本大百科全書(ニッポニカ) 「子じま寺」の意味・わかりやすい解説

子じま寺
こじまでら

奈良県高市(たかいち)郡高取(たかとり)町にある寺。真言宗御室(おむろ)派に属する。子じま山千寿(せんじゅう)院と称する。760年(天平宝字4。寺伝では天平勝宝4年=752)に報恩が創建し、2世延鎮(えんちん)のとき京都の清水寺を建てた坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)が帰依(きえ)した。当時は法相(ほっそう)宗で八宗兼学の道場であった。永観(えいかん)年中(983~985)に真言宗子島流の開祖真興(しんごう)が興福寺から当寺に来山して、山下に観覚寺を建立した。一条(いちじょう)天皇不予のとき真興の祈祷(きとう)によって平癒したので、宮中に保管していた紫綾(しりょう)金銀泥の両界曼荼羅(まんだら)(空海が唐より請来。子島曼荼羅という)、大般若経(だいはんにゃきょう)一部などを賜った。戦国時代に兵火にかかったが、豊臣(とよとみ)秀長(秀吉の弟)が再興し、千寿院と称した。明治初頭に一時廃寺となったが、のち復興した。本尊大日如来(だいにちにょらい)。境内にある聖天(しょうでん)堂は旧高取城の堂を、また山門は同城の二の門をそれぞれ移築したものである。寺宝には子島曼荼羅(国宝)、十一面観音(かんのん)立像(桓武(かんむ)天皇念持仏、国重要文化財)、石灯籠(とうろう)2基(梵字(ぼんじ)入り)などがある。

[祖父江章子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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