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美術,工芸,書跡・典籍,考古資料,歴史資料,建造物など国が指定する重要文化財のうち,とくに製作がすぐれ,学術的価値が高いもの,かけがえがなく歴史上きわめて意義が深いものを,文部大臣が国宝に指定する。その規準は1950年制定の文化財保護法および75年の文化財保護法施行令に定められており,その事務は,はじめ文化財保護委員会が担当したが,68年に文化庁が発足してからはそこが主務している。この法律は文化財の保存と活用を目的としており,国宝を含めて重要文化財は,管理や修理に国の補助を受けることができるが,現状の改変には文化庁長官の許可を必要とし,所有者の変更には届出の義務があるなどの制限がつけられている。文化財保護の法的措置の歴史は古く,1897年の古社寺保存法にはじまり,1929年に国宝保存法の制定をみた。このとき宝物類3705件,建造物845件が国宝に指定されている。また1933年に美術品の海外流出にたいする防止策として重要美術品等の保存に関する法律が定められ,重要美術品の認定は文化財保護法ができるまでつづいた。50年の文化財保護法の制定は,49年の法隆寺金堂壁画の焼失が機縁になっている。これにより,旧国宝は重要文化財に横すべりしたが,そのうち世界文化の見地から価値の高いものをあらためて国宝とするほか,未調査のまま埋もれている文化財について調査を行い,新たに国宝あるいは重要文化財に指定することとした。2008年7月現在,美術・工芸等については1万0283件が重要文化財,そのうち861件が国宝に指定され,建造物については2338件が重要文化財,そのうち214件は国宝に指定されている。
→文化財
執筆者:原田 実
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
日本に存する建造物、美術工芸品、文書などの文化財のうち、とくに「国の宝」というべき価値高いものとして選ばれ指定されたもの。古くは古社寺保存法および国宝保存法によって指定されたが、1950年(昭和25)8月、新たに文化財保護法がつくられ、現在はそれに基づいて行われている。これによって従来の旧国宝はいったんすべて重要文化財と改められ、このなかからさらに重要なものを選んで新国宝に指定している。また1950年以後に重要文化財となったものから国宝に格上げされた文化財も多く、すべてをあわせると2019年(令和1)7月時点で1116件に及んでいる。なお、人間国宝というのは重要無形文化財の保持者に対する俗称である。
[村重 寧]
『小林行雄・井上靖・児玉幸多他監修『国宝大事典』全5巻(1985~1986・講談社)』▽『文化庁監修、毎日新聞社図書編集部編『国宝・重要文化財大全』1~12巻・別巻(1997~2000・毎日新聞社)』
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
1950年(昭和25)制定の文化財保護法により,重要文化財のうちとくに価値が高いものとして国が指定した文化財。建造物と美術工芸品からなり,美術工芸品は絵画・彫刻・工芸品・書跡・典籍・古文書・考古資料・歴史資料に分類される。文部科学大臣が指定して文化庁が所管し,その管理・保護・公開などに必要な措置をとることが定められている。また1950年以前には,古社寺保存法・国宝保存法により,有形文化財の価値の高いものを国宝に指定したが,文化財保護法によりそれらは重要文化財と呼称を改め,これを含めた重要文化財のなかから新たに国宝が指定された。文化財保護法によるものを新国宝,それ以前のものを旧国宝として区別することもある。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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