家庭医学館 「孔脳症」の解説
こうのうしょう【孔脳症 Porencephaly】
胎児(たいじ)や分娩中(ぶんべんちゅう)・分娩直後(周産期)の赤ちゃんの脳に、一定期間、十分な酸素とグルコースがゆきわたらないと、脳の一部が変性をおこし、機能を失います。
変性した部分は吸収され、そのあとが液体に満たされた空洞(くうどう)(欠損(けっそん))として残ります。主として大脳半球(だいのうはんきゅう)に発生する病態です。
左側の中大脳動脈(ちゅうだいのうどうみゃく)から血液の供給を受けている部位に発生する傾向があります。
脳の欠損が両側にあって、大脳の表面に多量の液体(髄液(ずいえき))が貯留している場合を水無脳症(すいむのうしょう)といいます。また、スイス・チーズのように脳に多数の空洞ができることもあります。
[症状]
脳性まひと呼ばれる状態となり、四肢(しし)(両手足)の痙性(けいせい)まひ、てんかん、精神発達遅延などがおこります。しかし、目立った症状のないこともあります。
[原因]
周産期におこる脳循環障害(のうじゅんかんしょうがい)(脳虚血(のうきょけつ))、未熟児の脳内出血、細菌感染、出産時の頭部外傷などによる脳の低酸素状態が原因となります。
頭部のCTやMRIで診断できます。てんかんがあれば脳波検査が必要です。
[治療]
急性期には、脳神経外科医の重点的な治療が必要です。
慢性期には、てんかんには抗てんかん薬を使用し、痙性まひには内科的あるいは外科的な治療(選択的後根切除術(せんたくてきこうこんせつじょじゅつ))が行なわれます。リハビリテーションもたいせつな治療法です。