同位体のうち、自然界で放射能を放出しないもの。安定同位元素と同意義。放射性同位体(ラジオ・アイソトープ)と対比される。安定同位体は81種類ある。代表的なものは水素、リチウム、ホウ素、炭素、窒素などである。 に示すように原子核の中の陽子数をZ、中性子数をN、その和をAとすると、安定同位体はZとNとがほぼ同数のものに多く、重い元素になるとZよりNが大きいものほど安定である。また、ZもNも偶数である場合、安定な核種が多い。これは原子核の中で陽子どうし、中性子どうしの結合が強いことを示している。はジュウテリウム(重水素)といい、元素記号Dである。Hに比べて原子量が約2倍大きいので、化学反応の機構や分子の構造の研究に広く使用されている。
[下沢 隆]
『酒井均・松久幸敬著『安定同位体地球化学』(1996・東京大学出版会)』
… 同位体は1906年アメリカのボルトウッドB.B.Boltwoodによって,当時イオニウムIoと呼ばれていたウラン系列に属する放射性元素がトリウム232Thと同じ化学的性質を示すことからその同位体230Thであることを発見されたのが初めである。同位体のうち不安定で放射能をもち,崩壊するものを放射性同位体,安定で崩壊しないものを安定同位体あるいは非放射性同位体といっている。放射性同位体には,天然に存在する天然放射性同位体と人工的につくられた人工放射性同位体がある。…
…このような過程を放射性崩壊(または放射性壊変)といい,放射性崩壊する同位体を放射性同位体という。他方,原子核が安定に存在し,放射性崩壊を起こさない同位体を安定同位体という。例えば,水素原子には1Hのほかに2Hと3Hの同位体があり,それぞれジュウテリウム(重水素),トリチウム(三重水素)と呼ばれるが,前者は安定同位体であり,後者は放射性同位体である。…
※「安定同位体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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