日本大百科全書(ニッポニカ) 「安定同位体」の意味・わかりやすい解説
安定同位体
あんていどういたい
stable isotope
同位体のうち、自然界で放射能を放出しないもの。安定同位元素と同意義。放射性同位体(ラジオ・アイソトープ)と対比される。安定同位体は81種類ある。代表的なものは水素、リチウム
、ホウ素
、炭素
、窒素
などである。 に示すように原子核の中の陽子数をZ、中性子数をN、その和をAとすると、安定同位体はZとNとがほぼ同数のものに多く、重い元素になるとZよりNが大きいものほど安定である。また、ZもNも偶数である場合、安定な核種が多い。これは原子核の中で陽子どうし、中性子どうしの結合が強いことを示している。
はジュウテリウム(重水素)といい、元素記号Dである。Hに比べて原子量が約2倍大きいので、化学反応の機構や分子の構造の研究に広く使用されている。
[下沢 隆]
『酒井均・松久幸敬著『安定同位体地球化学』(1996・東京大学出版会)』