核種(読み)カクシュ

デジタル大辞泉 「核種」の意味・読み・例文・類語

かく‐しゅ【核種】

原子番号質量数・エネルギー状態によって特徴づけられる原子核あるいは原子種類。原子番号が同じで質量数の異なるものを同位体といい、原子番号・質量数が同じでエネルギー状態の異なるものを核異性体という。

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精選版 日本国語大辞典 「核種」の意味・読み・例文・類語

かく‐しゅ【核種】

  1. 〘 名詞 〙 原子核を構成する陽子・中性子の数によって分類される個々の原子核をいう。陽子数が等しく中性子数が異なる核種を同位体という。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「核種」の意味・わかりやすい解説

核種
かくしゅ

陽子の数と中性子の数で特定される原子核の種類。原子核は陽子と中性子で構成されている。中性子は電荷をもたないが、質量は陽子とほとんど等しく、スピンも同じで、相互作用の性質も同じである。陽子の電荷は電子の電荷と符号が異なり大きさは同じである。原子は中性であり、原子番号Zの原子の原子核にはZ個の陽子が存在する。中性子の個数NとするとZNが原子核を構成する核子数Aであり、核の質量にほぼ比例するため、Aを核の質量数ともいう。種類の異なった核種は、原子番号Z、中性子数N、質量数Aの三つのうち二つで区別される。通常、核種は質量数と原子番号で特定される。核種を表すには、元素記号を真ん中に、質量数を左上に書き、原子番号を左下に添える。たとえば酸素のもっとも安定な核種である酸素16(Oxygen-16)は168O、鉛の場合は鉛208(Lead-208)で20882Pbと表される。ほか炭素14(Carbon-14)は146C、ウラン238(Uranium-238)は23892Uとなる。核種の分類でよく使われるものには、Zが同じでAの異なる同位核アイソトープ)、Nが同じでAが異なる同中性子核、Aが同じでZが異なる同重核がある。現在約300種類の安定な核種の存在がわかっている。人工的に核種をつくることはできるが、崩壊する不安定な核種を入れると3000を超える核種が確認されている。理論的に存在が予測されている核種数は約7000であり、年々約40の割合観測にかかる不安定な核種が増加している。

[池田清美]

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改訂新版 世界大百科事典 「核種」の意味・わかりやすい解説

核種 (かくしゅ)
nuclide

原子核の状態すなわち原子番号Zおよび質量数Aで原子を分類したときの原子の種類をいう。現在までに核種は約1500ほどが知られているが,これを原子番号で分類すると約100種になり,これが元素で,同じ元素で質量数の違うものは同位体という。質量数すなわち重さのみに着目して分類すると約260種になり,質量数が同一の核種を同重体という。核種を示すには,元素記号の左上側に質量数A,左下側に原子番号Zを添える。たとえば天然に存在するウランは,のように示され,同位体が区別される。核種のうち安定なものを安定核種(約210種),不安定なものを放射性核種という。
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知恵蔵 「核種」の解説

核種

同じ原子番号をもっていて質量数が違う同位体(例えば炭素12、炭素13、炭素14)のそれぞれを異なる核種という。そのままでは不安定なために放射線を出して安定した状態に変わるものがあり、それを放射性同位体または放射性核種と呼ぶ。このような原子からできている物質放射性物質である。放射線を出したときに別の原子に変わることもあり、原子核崩壊という。放射性物質が放射線をどれくらい出すかが放射能で、その強さは時間とともに弱まる。元の半分になるのに要する時間は核種によって決まっており、半減期という。現在1900種類ほどの核種が知られているが、このうち約300種は自然界に存在する安定核種である。

(渥美好司 朝日新聞記者 / 2008年)

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百科事典マイペディア 「核種」の意味・わかりやすい解説

核種【かくしゅ】

原子核の状態,特に原子核の陽子・中性子の数で原子を分類したときの原子の種類。現在までに核種は約1500ほどが知られているが,これを原子番号で分類すると約100種になる(これが元素)。また,同じ元素で質量数の違うものは同位体(同位元素)という。核種のうち約210種が安定核種で,残りが不安定な放射性核種である。

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化学辞典 第2版 「核種」の解説

核種
カクシュ
nuclide

原子核(それを含む原子)の種類を示すのに用いる用語で,普通,固有の原子番号と固有の質量数をもつものを1種類の核種という.不安定な核種は,放射線を放出して崩壊するので放射性核種とよぶ.放射性核種の場合,明らかに半減期の異なる異性核の核種を,基底状態あるいはそのほかの半減期の異性核の核種と区別する.[別用語参照]核異性

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「核種」の意味・わかりやすい解説

核種
かくしゅ
nuclide

原子核の種類を示す用語。原子番号Z,および質量数Aで区別されている。Zは陽子数に等しく,N=A-Zは中性子数である。Zが同一でAが異なる核種を同位体,Nが同一でAが異なる核種を同調体,Aが同一でZが異なる核種を同重体,AもZも同じで長寿命の異なる核種を異性核 (アイソマー) という。 1995年の時点では 2500以上の核種が知られ,その数は年ごとに増加している。

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栄養・生化学辞典 「核種」の解説

核種

 陽子と中性子の数,すなわち原子核の組成によって規定される種類.しばしば同位元素と混同して使われる.

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世界大百科事典(旧版)内の核種の言及

【放射性同位体】より

…原子核は陽子と中性子からなり,陽子の数が原子番号を,陽子と中性子の数の和が質量数を表すので,同位体の間では原子核を構成する中性子の数のみが異なり,化学的性質は同じである。同位体が存在するため,原子核の性質を原子番号と質量数によって規定する必要があり,この両者によって規定される原子核を核種といい,質量数を左肩に付して60Coや90Srのように表す。 同位体の中には原子核が不安定で,自発的に放射線の形で余分なエネルギーを放出して他の核種に変換するものがある。…

※「核種」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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