日本大百科全書(ニッポニカ) 「定幅曲線」の意味・わかりやすい解説
定幅曲線
ていふくきょくせん
閉じた平面凸曲線が平行2直線l、mの間に収まっていて、かつl、mのいずれとも共有点をもつとき、l、m間の距離をこの曲線のl方向の幅という。方向に関係なく幅が一定である平面凸曲線を定幅曲線という。円は定幅曲線であるが、定幅曲線は円以外にもたくさんある。リューローReuleauxの三角形はその例である。同様の方法で一般に奇数個の頂点をもつ正多角形から定幅曲線をつくることができる。こうしてつくった定幅曲線はいずれも頂点のところがすこしとがっているが、至る所滑らかな定幅曲線をつくることもできる。縁が定幅曲線であるような硬貨(このような硬貨で円くないものが実際にイギリスなどにある)を自動販売機などのスリットに入れるときは、スリットの長さが硬貨の幅と同じなら、硬貨をどの部分から押し込んでもきっちり入る。また、この硬貨を平らな地面に垂直に立てたまま板を乗せて水平に転がすとき、硬貨の動きは複雑であるが、板のほうは高さを一定に保ちながら動く。幅がdの定幅曲線の周長は、曲線の形状に関係なくつねにπdであることが知られている。なお、定幅曲線と同じ要領で、空間の定幅曲面も定義できる。やはり、球面以外にも定幅曲面はたくさんある。たとえば、リューローの三角形をつくったような方法で、正四面体から定幅曲面をつくることができる。
[高木亮一]