えん ヱン【円】
〘名〙
① まるいこと。まるいもの。まるい輪。
※吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉二「口を中心として急劇に円を劃して見る」
②
平面上の
曲線の一つ。一
定点から等距離にある点の
軌跡。
円周。また、それによって囲まれた平面の部分。〔工学字彙(1886)〕
※滑稽本・人心覗機関(1814)上「ヲット二円
(ヱン)二方よしよし」
※小学読本(1873)〈田中義廉〉一「百銭を一円といふ」
④ 仏語。完全で欠けるところがないこと。
[語誌](③について) 近世、小判の形から、「両」と同意に使われたが、明治四年(
一八七一)「
新貨条例」によって採用され、純金四分(一・五グラム)に相当し、それまでの一両、または永一貫文にあたるとされた。しかし、実質的に金本位制が確立して金と直結したのは明治三〇年で、「
貨幣法」によって純金の量目二分(〇・七五グラム)に相当すると定められた。昭和六年(
一九三一)の金本位制離脱後は、対
ドルあるいは対ポンド相場がその価値の基準となった。第二次大戦中から
戦後にかけて円の価値は暴落したが、昭和二四年一ドル三六〇円とされた。昭和三九年日本がIMF八条国になるとともに、円の交換性は回復に向かい、さらに目ざましい経済力の成長から国際的にも、その価値が高まり昭和四六年一二月、一ドル三〇八円と切り上げられた。昭和四八年二月、アメリカがドルの再度の切下げを行なったのを
契機に、主要国
通貨はいずれも変動相場制に移行し、円もこれにならった。
つぶ‐ら【円】
〘形動〙 まるくてふっくらとしているさま。小さくてまるいさま。つばら。
※倭姫命世記(1270‐85頃)「従此処に、円(つぶら)なる小山在りき」
※
殉情詩集(1921)〈佐藤春夫〉昼の月「君が瞳はつぶらにて 君が心は知りがたし」
ウォン【円】
①
大韓民国の通貨単位。一九六二年、従来の貨幣単位「圜
(ホアン)」を改めたもの。
まりりか【円】
※大治本新華厳経音義(奈良末)「傭長 〈
略〉倭言麻利々加爾
(マリリカニ)」
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円
えん
日本の通貨の呼び名。明治4 (1871) 年の新貨条例制定により通貨の単位として円が登場。 1897年の貨幣法により金本位制度が確立し,純金 750mgを1円とした。その後 1931年末の金輸出禁止と銀行券兌換停止により金本位制度は停止され,円は管理通貨制度に移行した。第2次世界大戦中および戦後のインフレーションと戦後の対外為替取引の停止を経て,49年4月に1米ドル=360円の基準為替相場が公定され,60年7月に対外交換性が回復された。円の価値は対内的にみると戦後のインフレーションの過程で著しく減価しているが,対外的な価値は相対的に強くなっており,71年 12月 19日1米ドル=308円に切上げられた。 73年2月変動為替相場制度に移行,85年9月プラザ合意後はさらに円高に推移し,94年6月には初めて1米ドル=100円を突破して2桁の数字を記録した。
円
えん
circle
平面上で,その上の一定点Oから一定の距離 r ( r >0) にある軌跡 C を円という。このOを円の中心,r を半径という。軌跡 C は平面の一部分を囲む連続閉曲線で,この曲線の内部の点全体 (領域) を含めて円というとき (→円板 ) は,C を特に円周と呼ぶ。
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えん〔ヱン〕【円】
1 まるいこと。また、その形。「地面に円を描く」「方円」
2 平面上で一点から等しい距離を保ちながら動く点の軌跡(円周)と、その内部。「同心円」
3 《yen》日本の通貨単位。1円は100銭。明治4年(1871)の新貨条例により、両に代わって円が定められた。記号は¥。
[類語]円形・同心円・真ん丸・半円・楕円・長円
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えん【円】
[円の起源]
円は日本貨幣の基本単位名であるが,1871年(明治4)制定の〈新貨条例〉によって採用された。銭・厘を補助単位とする十進法の計算体系をもつ。それまで流通の江戸期金貨には1601年(慶長6)制定の両・分(ぶ)・朱という単位が使用されていた。1両=4分,1分=4朱の四進法であり,鋳貨の形態にも小判形と方形との2種があった。日本の貨幣制度を世界的水準にあわせようとして採用されたこの円銭厘体系の採用により,両分朱の単位は廃止された。
えん【円 circle】
平面上において,1定点から一定の距離にある点全体の作る図形を円と呼び,その定点を円の中心という。円はふつうコンパスを用いて描かれるが,もっと素朴には,伸びない糸の一端を固定して,その周りに他端を回転させることによって得られる。このように,円は簡単に作られるまるくて美しい図形であるので,古くから人々に親しまれた。とくに,合理的な美を理想とした古代ギリシアの哲人たちは円を完全な図形と考え,プラトンなどは直線と円だけで作図できる図形を“幾何学的”とした。
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世界大百科事典内の円の言及
【ヤントラ】より
… 図形としては,次のようなものが用いられる。点(それ以上凝縮しえない究極的相を示す),直線(成長・展開の相を示す),円(〈全体〉を表す),四角形(自然の質料を表す),三角形(サーンキヤ学派の説く純質・激質・暗質という自然の三つの性質などを示し,下向きのものは女性原理を,上向きのものは男性原理を表す),下向きと上向きの二つの三角形が交わってできる六芒星の形(六角の星形で,現象世界を顕現させる力を表す),五芒星(地・水・火・風・空の〈五大〉などを表す)などである。そのほかに〈門〉を表す形(聖域に入る入口を示す),蓮の花弁の形(神格の属性としての願望を成就させる力などを表す)なども用いられる。…
【ロトンダ】より
…円形ないしそれに近い多角形プランの部屋,または建物のこと。多くはドーム状の天井や屋根をもつ。…
【餅】より
…古語ではモチヒと呼称しており,モチイヒ(糯飯ないし黐飯)の約語と解釈したり,鏡餅を典型とした円形状の食物であるから望月の望と同意とする説もある。いずれにせよ,もち米を蒸して臼に入れ,杵で搗(つ)いたうえで,いろいろの形につくったものを餅の字で表してきたのであるが,餅という漢字は日本独自の使い方であり,中国の用法とはまったく異なっている。…
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