宣夜説(読み)せんやせつ(その他表記)xuān yè shuō

改訂新版 世界大百科事典 「宣夜説」の意味・わかりやすい解説

宣夜説 (せんやせつ)
xuān yè shuō

蓋天説渾天説とともに中国古代を代表する宇宙説の一つ。《晋書》天文志に後漢の郄萌(げきほう)が伝えたという宣夜説が記され,日月衆星は虚空の中に浮かび気によって運行したり止まったりするから,各天体の固有の運動が生じるとされている。天空が青く見えるのは天空の無限性によるとした無限宇宙論である。これは《荘子》逍遥游などにも見る考え方で,宣夜説の起源戦国時代にあるとされる。
宇宙
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「宣夜説」の意味・わかりやすい解説

宣夜説
せんやせつ

古代中国の三大宇宙論の一つ。宇宙を大地を覆う半球と考える蓋天説(がいてんせつ)、全球面の天球を考える渾天説(こんてんせつ)に対して、宇宙は空虚で実質がないと説くところが特徴である。天は空虚で高遠で限りがない。日・月・諸星空中に浮かび、動いたり止まったりする。ときには順行し、ときには逆行するが、すべてが独立の規則性に従っている。しかし実質があるのではなく、気が凝縮すると諸星は現れ、気が散逸すると消滅する。太陽は1日に角度の一度、月は13度、五惑星はそれぞれの速度で動くが、これは天体が何ものかに付着していないためである。天球にとらわれない無限の空間の可能性がこの思想根底にある。宣夜説の書はすべて散逸し、後漢(ごかん)の郄萌(けきぼう)が先師の説をまとめたと『晋書(しんじょ)』天文志に書かれている。

[石田五郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「宣夜説」の意味・わかりやすい解説

宣夜説
せんやせつ

中国古代の天体説。天には形質なく,衆星は天空に浮遊するものと考えた。蓋天説 (がいてんせつ) ,渾天説 (こんてんせつ) に対抗するものであるが,その詳しい内容については明らかにされていない。

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世界大百科事典(旧版)内の宣夜説の言及

【宇宙】より

…しかし,依然としてここでも天は固体として観念されている。天を気の集積とみなして天の固体性を打破し,宇宙空間を無限へとおし広げたのが宣夜説であった(《晋書》天文志)。三国時代の呉の人である楊泉は宣夜説を継承し,〈天地を成す者は気なり〉として,気一元論を唱道した(《物理論》)。…

※「宣夜説」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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