デジタル大辞泉 「虚空」の意味・読み・例文・類語
こ‐くう【虚空】
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1 何もない空間。大空。「
2 仏語。何も妨げるものがなく、すべてのものの存在する場所としての空間。
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1 事実にもとづかないこと。また、そのさま。架空。
「―仮設の人物」〈逍遥・小説神髄〉
2 とりとめがないこと。また、そのさま。漠然。
「―なることを申す者かな」〈幸若・夜討曽我〉
3 思慮分別がないさま。むやみ。やたら。
「―におやぢが煮え返る」〈浮・禁短気・三〉
[補説]書名別項。→虚空
[類語]空・天空・大空・天・
尺八楽古典本曲の一つ。その伝説的起源は次のとおり。中国から日本へ普化尺八を伝来した覚心は,門弟寄竹(のちの京都明暗寺の祖虚竹禅師)に《虚鈴(霊)(きよれい)》を伝授し,寄竹はそれを吹いて行脚中,伊勢朝熊山の虚空蔵堂に参籠し,通夜仮眠中に霊夢を見る。すなわち,みずからは水上の孤舟にあり,あたりは深い霧に閉ざされ,天空から妙音が聞こえる。やがて霧は消え,晴れ渡った虚空から別の妙音が響く。夢さめた寄竹は2種の妙音を尺八曲となし,帰参して師の覚心に聞かせ,覚心はその2曲に《霧海篪(むかいぢ)》と《虚空篪》の名を与えた。この伝説ゆえにこれら2曲は《虚鈴(霊)》とともに古伝三曲(または三虚霊)と呼ばれ,最古の曲としてとくに尊重されている。曲名には普化宗らしい禅的な解釈が付会され,妄想を断ち太虚と融合する意といわれる。多くの芸系(流派)では《虚空》と称するが,琴古流では《虚空鈴慕》と呼び,また明暗真法(みようあんじんぼう)流には《真虚空》など真行草の3種の《虚空》が伝わる。同じ曲名でも曲の内容は流派により異なる。伝承過程で各派各様の変化を生じた結果であろう。芸系にもよるが,概していえば,古伝三曲の中では比較的明るい曲想で,〈ころころ〉という特殊なトリルの多用が特徴的である。
執筆者:上参郷 祐康
サンスクリットのアーカーシャākāśaの漢訳で,一般に大空,空間,間隙などを意味するが,古来インド哲学では万物が存在する空間,あるいは世界を構成する要素,実体として重要な概念の一つである。地・水・火・風の〈四大〉に虚空を加えて五元素ともいわれ,これに五感(香・味・色・触・声)を関連づけるサーンキヤ学派やバイシェーシカ学派の思想のもとでは虚空が聴覚と結びつき,音声は虚空の属性とされた(西洋哲学の〈エーテル〉の概念に相当)。仏教では〈六界〉の一つ(空界)とする一方,実在論的な部派では不生不滅の常住な存在(無為法)に高めた。広大無辺,永遠,清浄,無障礙(むしようげ)などのあり方を備えていることから,しばしば絶対者,超越,真理の概念と結びつけられる。
→虚空蔵(こくうぞう)
執筆者:丸井 浩
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
字通「虚」の項目を見る。
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…何ものも存在しない空間。例えば仏教的な概念系の中では,空間概念に相当する虚空ākāśaはむしろ真空である。もちろんそれは真空のことばが運びがちな科学的な文脈での意味とは無縁であるが,虚空とは,事物が生起し,運動するための空間的余地という意味合いを含んでいる。…
※「虚空」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」