日本大百科全書(ニッポニカ) 「家族の肖像」の意味・わかりやすい解説
家族の肖像
かぞくのしょうぞう
Conversation Piece
イタリアとフランスの合作映画。1974年、ルキーノ・ビスコンティ監督の晩年の作品。ローマの豪邸に住む老教授(バート・ランカスター)は、家族のだんらんを描いた18世紀のイギリス絵画(カンバセーション・ピースとよばれる)のコレクションに囲まれて静かな余生を送っている。そこへ右翼の大立て者の夫人が訪れ、夫人の若い恋人のために部屋を貸すことを教授に強引に承知させてしまう。その日から教授の生活は、この2人と夫人の娘、その恋人の4人に平穏を乱されることになる。教授の生活やところどころに挿入される回想は古きよきヨーロッパをしのばせる。ヨーロッパ文明の象徴であるかのような教授と、デカダンスや淫蕩(いんとう)に生きる「侵入者」たちとの食い違いは根深く、両者が繰り広げるドラマは、貴族の出であるビスコンティの目に映る世界であり、現代ヨーロッパの縮図といえよう。
[出口丈人]
『長谷部匠訳『ヴィスコンティ秀作集5 家族の肖像』(1982・新書館)』