2016年(平成28)4月の電力小売り全面自由化以降、一般家庭や商店など契約電力が50キロワット未満の消費者に電気を販売できる事業者のうち、大手電力会社10社(一般電気事業者)を除くもの。いわゆる電力小売りに参入した新電力(特定規模電気事業者、PPS)のうち、一般家庭向けに販売する事業者をさす。たとえば、東京に住む一般家庭は東京電力からしか電気を買えない地域独占が続いてきたが、大手電力会社の送配電網を使って全国どこの小売電気事業者からでも電気の供給を受けることができるようになった。小売電気事業者は電気供給力の確保義務のほか、契約締結前の顧客への説明、締結時の書面交付、苦情処理などの対応義務などを果たす必要がある。このため改正電気事業法(平成26年法律第72号)に基づき、経済産業省の電力取引監視等委員会からの意見聴取を受けたうえで、経済産業大臣から登録を受けなければならない。経済産業省は2015年8月から小売電気事業者の登録受付を開始。東京ガスなどのガス会社、JXエネルギーなどの石油元売り、KDDIなどの通信会社、伊藤忠商事などの商社のほか、パナソニック、ミサワホーム、オリックス、ジェイコム、生活協同組合コープこうべなど多様な業種から登録が相次いだ。2016年1月末時点で、286事業者から申請があり、このうち169事業者が登録された。
小売電気事業者は大手電力会社の送配電網の使用料金(託送料金)などを基に、電気料金体系やサービス内容を公表。電気料金とガス代、ガソリン代、携帯電話料金、インターネット料金、ケーブルテレビ料金などとを組み合わせたセット割引のほか、ポイント付与サービス、時間帯別特別料金などを提供して顧客獲得を目ざす。既存の電力会社から小売電気事業者への契約切替え手続きは2016年1月から始まった。小売電気事業者はインターネットサイトや電話で新規契約を受け付け、一般家庭の電力メーターを無料で取り替えたうえで電力供給を始める。
[矢野 武 2016年6月20日]
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