行政法上,登録とは,行政機関において一定の事項を,多くの場合関係人の申請により,公簿に記載することをいう。法令の規定に基づいてなされる登録は,行政行為としての公証の一種であり,登録された事項につき公の証拠力を生ずるほか,種々の法律効果を伴う。登録によって一定の権利が発生する場合(特許法66条による特許権設定の登録),登録がなければ法律関係の変動を第三者に対抗しえないとされる場合(道路運送車両法5条,自動車抵当法5条による自動車所有権,抵当権の得喪の登録),登録を受けなければ一定の行為をしてはならないとされる場合(毒物及び劇物取締法3条による毒物・劇物製造業等の登録)などがある。法令が登録制度を定めるのは,基本的にはそれによって法律関係の明確性を確保するためであるが,最近では,一定の行政目的に照らして営業活動等を規制するための,許可制に準ずる手法として用いられる場合も多い。
なお,法令上,登録という観念は,それ自体として独立した一個の行政行為ではなく,単に,行政庁が一定の行政行為をする場合の形式を意味するものとして用いられることもある(医師法6条が,厚生大臣による医師の免許は,医籍に登録することによってこれをなす,としているのがその例)。
執筆者:小早川 光郎
国際法上では,条約を国際連合の事務局に登録する制度がある。第1次大戦後,戦争の原因の一つである秘密外交を防止するために,国際連盟の加盟国がその締結する条約のすべてを国際連盟事務局に登録し,後者がこれを条約集の形にまとめて公表する制度として設けられたことに始まる制度である。国際連盟規約18条に,未登録の条約は拘束力を認められない旨が規定されたが,実際的効果をあげることはできなかった。国際連合の登録制度は国際連盟のそれをほぼ受け継いでおり,国連憲章102条は条約の登録とその公表を規定しているが,登録を怠った場合の条約の取扱いは連盟規約のそれとは異なっている。すなわち,登録を怠った国は国際連合のいかなる機関に対してもその条約を援用できないことになった。しかしながら,登録をしなくても当事国間では有効なため,軍事条約のように内容を公開しにくい条約は登録されない傾向にある。
執筆者:岡村 尭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
行政上の事前規制の手法の一種で、いわば届出制と許可制の中間的な仕組み。登録は一定の客観的な基準に合致すれば認められるが、一定事項違反に対しては登録が取り消される。旅行業法、農薬取締法、弁護士法、貸金業法、行政書士法などがその例である。たとえば、旅行業法では、旅行業を営もうとする者は観光庁長官の行う登録を受けなければならない。一定の犯罪歴があり刑の執行を終えてから5年を経過していない者、登録取消の前歴があり取消の日から5年を経過していない者、申請前5年以内に旅行業務に関し不正な行為をした者、成年被後見人、被保佐人、破産者で復権を得ない者などは登録を拒否される。通常人であれば登録を拒否されることはない。同業者が過剰だ、競争業者が反対しているという事情などは登録の拒否事由にならない。登録には有効期間があるのが普通である。登録なしで営業すると処罰される。登録業者は登録拒否事由に該当するに至ったときのほか、一定の不正行為をしたときなどに登録を取り消されたり、営業停止される。
[阿部泰隆]
…これに対し,電気事業の許可(電気事業法3条)や鉄道業の免許(鉄道事業法3条)のように,とくに公共性の強い事業について,行政庁の積極的な監督のもとに適正な経営を行わせることを目的とする制度もあるが,それらは行政法学上,ここにいう営業許可と区別して〈公企業の特許〉と呼ばれることが多い。なお最近の立法では,営業に関する〈登録〉の制度を採用する例が増えている。〈貸金業の規制等に関する法律〉に基づく貸金業者の登録はその一例である。…
…登記簿には,原則として,バインダー式帳簿が使用され,一定の表紙および目録とともに登記用紙が編綴される。 日本には,公簿に一定の事項を記載するものとして,登記のほかに,登録(たとえば,住民登録,鉱業登録,医籍登録など)という制度があるが,登記と登録とは区別される。登記はもっぱら私権に関する公示を目的とし,登記所がつかさどるものであるのに対し,登録は私権に関する公示の作用を果たすこともあるが,各種の行政的目的の必要から活用される場合が少なくなく,登記所以外の行政官庁においてつかさどられている。…
※「登録」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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