小説の方法(読み)ショウセツノホウホウ

デジタル大辞泉 「小説の方法」の意味・読み・例文・類語

しょうせつのほうほう〔セウセツのハウハフ〕【小説の方法】

伊藤整評論。昭和23年(1948)刊行私小説中心だった当時の日本小説界の性格を、ヨーロッパ文学や生活習慣などの観点から考察したもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「小説の方法」の意味・わかりやすい解説

小説の方法
しょうせつのほうほう

伊藤整(せい)の評論集。1947年(昭和22)から48年にかけ『人間』その他に発表。48年河出書房刊。私小説中心の日本の近代小説の性格を、作家と社会、作品と実生活、思想倫理と芸術性との関係などを軸に、ヨーロッパの小説や生活環境と比較する一方、実作者としての体験を踏まえて、さまざまな角度から考察した論。社会を放棄して狭い文壇のなかで体験を告白しあった私小説家たちと、社会の一員として生きるために仮構を必要とした西洋の作家たちとを、「逃亡奴隷」と「仮面紳士」という対概念でとらえた点がとくに注目された。私小説論、文学原理論として、第二次世界大戦後の名著の一つに数えられる。

[曾根博義]

『『小説の方法』(新潮文庫)』

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世界大百科事典(旧版)内の小説の方法の言及

【伊藤整】より

…S.フロイトの精神分析を文学にとり入れ,J.ジョイスなどの西欧20世紀文学の方法を紹介,移入した。その後,抒情詩人としての資質を知性で統御しながら,20世紀小説の方法と私小説の持つ芸術的な力を組み合わせる独自の方向に進み,小説《街と村》(1939)から《得能五郎の生活と意見》(1941),《得能物語》(1942)を経て《鳴海仙吉》(1950)を書いた。また《小説の方法》(1948)は,私小説を中心とする日本の近代小説の性格を西洋と比較しながら理論的に解明した画期的な評論である。…

※「小説の方法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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