(読み)クキ

デジタル大辞泉 「岫」の意味・読み・例文・類語

くき【×岫】

山の洞穴
かばねいはほの―に積みたり」〈欽明紀〉
山の峰。
玉釧たまくしろまき寝しいもを月も経ず置きてや越えむこの山の―」〈・三一四八〉

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精選版 日本国語大辞典 「岫」の意味・読み・例文・類語

くき【岫】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 山の斜面やがけにあるほらあな。
    1. [初出の実例]「皇后(きさいのみや)は別船にめして洞海〈洞、此には久岐(クキ)と云ふ〉より入りたまふ」(出典:日本書紀(720)仲哀八年正月)
  3. 山頂。山の峰。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕

岫の補助注記

( 1 )「草くき」「かやくき」とともに動詞「くく」「たちくく」「とびくく」と関係づけて、「潜る」「漏れる」の意から「穴」をいうとされる。
( 2 )「岫」の字は、「説文」「爾雅」に「山有穴」とあって穴のある山の意であるが、「巖穴」をいうとの注もある。なお、「景行紀」「欽明紀」に見られる「峯岫」「巖岫」を古訓でミネクキ、イハクキと訓んでいる。


しゅうシウ【岫】

  1. 〘 名詞 〙 山のほら穴。岩穴
    1. [初出の実例]「烟は岫(シウ)を出づる雲の如く」(出典:即興詩人(1901)〈森鴎外訳〉古祠・瞽女)
    2. [その他の文献]〔陶潜‐帰去来辞〕

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普及版 字通 「岫」の読み・字形・画数・意味


8画

[字音] シュウ(シウ)・ユウ(イウ)
[字訓] いわあな・くき

[説文解字]

[字形] 形声
声符は由(ゆう)。由に袖(しゅう)の声がある。〔説文〕九下に「山にるなり」(段注本)とあり、〔爾雅、釈山〕も同訓。由は(ゆう)と同源の字で、が熟して中が油化し、外皮が(ひさご)形となることを示す字。それで由は油の初文であり、また由に中空の意があって、宙・軸のように用いる。岫はくき、洩れて欠けるところで、山穴の意となる。

[訓義]
1. いわあな、山の穴あるところ、くき。
2. やま、みね、いただき。

[古辞書の訓]
和名抄〕岫 久岐(くき)〔名義抄〕岫 クキ・ホラ・イハホ

[語系]
岫ziuは宙・袖diu、軸diuk、jiuと声近く、中空あるいは欠失のところがあるものをいう。

[熟語]
岫雲岫衍岫壑岫居岫戸岫幌・岫室・岫色岫勢岫濃
[下接語]
雨岫・雲岫・遠岫・怪岫・還岫・巌岫・危岫・奇岫・帰岫・穹岫・虚岫・岬岫・高岫・山岫・深岫・翠岫・層岫・丹岫・峯岫・幽岫・嵐岫・竜岫・林岫・霊岫

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